公開日: 2017/03/23 (掲載号:No.211)
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計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第20回】「引当金の会計方針に係るうっかりミス」

筆者: 石王丸 周夫

計算書類作成に関する

“うっかりミス”の事例と防止策

【第20回】

「引当金の会計方針に係るうっかりミス」

 

公認会計士 石王丸 周夫

 

1 今回の事例

計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。
たとえば、こんなミスをよく見かけます。

【事例20-1】
会計方針の記載が貸借対照表と整合していない。

個別注記表  引当金の計上基準  貸倒引当金・・・・・・・・・・・債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。 賞与引当金・・・・・・・・・・・従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額に基づき計上しております。  退職給付引当金・・・・・・・従業員の退職給付に備えるため、当事業年度の末日における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき計上しております。ただし、当事業年度末においては、年金資産の見込額が退職給付債務見込額から未認識数理計算上の差異を控除した額を超えているため、前払年金費用として貸借対照表の投資その他の資産に計上しております。数理計算上の差異は、その発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(13年)による定額法により按分した額をそれぞれ発生の翌事業年度から費用処理することとしております。

【事例20-1】は、計算書類の個別注記表に記載されている「引当金の計上基準」です。

各引当金の計上基準を一読した限り、特段間違いと思われる点はありませんが、これらの計上基準を貸借対照表と照らし合わせてみると、「おやっ?」と思われる点があります。

貸借対照表は以下のとおりです。

貸 借 対 照 表							 (平成〇年3月31日現在)							 							(単位:百万円) 科目			金額	科目			金額 資 産 の 部				負 債 の 部			 流動資産			8,964	流動負債			15,688 	現金及び預金		1,520		支払手形		689 	受取手形		574		買掛金		2,961 	売掛金		3,011		短期借入金		9,396 	商品及び製品		969		未払金		861 	仕掛品		1,227		未払法人税等		649 	原材料及び貯蔵品		567		賞与引当金		781 	繰延税金資産		795		その他		349 	その他		365	固定負債			2,759 	貸倒引当金		△65		長期借入金		2,500 固定資産			56,360		繰延税金負債		259  有形固定資産			39,145	負債合計			18,447 	建物		15,846	純資産 の 部			 	・・・・・・・			株主資本			40,555 					資本金		5,500  無形固定資産			93		・・・・・・・		 	商標権		25				 	・・・・・・・						 							  投資その他の資産			17,123				 	投資有価証券		10,557				 	・・・・・・・						 							 	前払年金費用		1,342				 	・・・・・・・

いかがでしょうか。
引当金の計上基準の文章に、どこかおかしな点は見つかりましたか?

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【第20回】

「引当金の会計方針に係るうっかりミス」

 

公認会計士 石王丸 周夫

 

1 今回の事例

計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。
たとえば、こんなミスをよく見かけます。

【事例20-1】
会計方針の記載が貸借対照表と整合していない。

個別注記表  引当金の計上基準  貸倒引当金・・・・・・・・・・・債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。 賞与引当金・・・・・・・・・・・従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額に基づき計上しております。  退職給付引当金・・・・・・・従業員の退職給付に備えるため、当事業年度の末日における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき計上しております。ただし、当事業年度末においては、年金資産の見込額が退職給付債務見込額から未認識数理計算上の差異を控除した額を超えているため、前払年金費用として貸借対照表の投資その他の資産に計上しております。数理計算上の差異は、その発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(13年)による定額法により按分した額をそれぞれ発生の翌事業年度から費用処理することとしております。

【事例20-1】は、計算書類の個別注記表に記載されている「引当金の計上基準」です。

各引当金の計上基準を一読した限り、特段間違いと思われる点はありませんが、これらの計上基準を貸借対照表と照らし合わせてみると、「おやっ?」と思われる点があります。

貸借対照表は以下のとおりです。

貸 借 対 照 表							 (平成〇年3月31日現在)							 							(単位:百万円) 科目			金額	科目			金額 資 産 の 部				負 債 の 部			 流動資産			8,964	流動負債			15,688 	現金及び預金		1,520		支払手形		689 	受取手形		574		買掛金		2,961 	売掛金		3,011		短期借入金		9,396 	商品及び製品		969		未払金		861 	仕掛品		1,227		未払法人税等		649 	原材料及び貯蔵品		567		賞与引当金		781 	繰延税金資産		795		その他		349 	その他		365	固定負債			2,759 	貸倒引当金		△65		長期借入金		2,500 固定資産			56,360		繰延税金負債		259  有形固定資産			39,145	負債合計			18,447 	建物		15,846	純資産 の 部			 	・・・・・・・			株主資本			40,555 					資本金		5,500  無形固定資産			93		・・・・・・・		 	商標権		25				 	・・・・・・・						 							  投資その他の資産			17,123				 	投資有価証券		10,557				 	・・・・・・・						 							 	前払年金費用		1,342				 	・・・・・・・

いかがでしょうか。
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連載目次

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策

▷2015年掲載
▷2016年掲載
▷2017年掲載
▷2018年掲載
▷2020年掲載
▷2021年掲載
▷2022年掲載
▷2023年掲載
▷2024年掲載

筆者紹介

石王丸 周夫

(いしおうまる・のりお)

公認会計士
石王丸公認会計士事務所

1968年生まれ。
1991年、慶応義塾大学商学部卒業。
1990年から2004年まで、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて会計監査実務に従事し、多くの企業を担当。
2004年に石王丸公認会計士事務所開業。現在は、監査や上場企業へのディスクロージャー・コンサルティングを中心に活動している。

【主な著作】
・『気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩
・『経理財務担当者、士業のための 最短で導き出す分配可能額
・『パターン別 計算書類作成「うっかりミス」の防ぎ方
・『会社の姿が浮かびあがるカンタン経営分析 決算書あぶり出し分析法』(以上、清文社)

   

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