空き家をめぐる法律問題
【事例3】
「地震が発生した場合の空き家の管理責任」
弁護士 羽柴 研吾
- 事 例 -
私は、父と同居していますが、父は、祖父から相続した建物を別に所有しています。父はその空き家を物置として利用していますが、高齢ということもあり、空き家に行くことはありません。ただ、私は、父に頼まれて、年に数回、換気や整理をしています。
空き家は、旧耐震基準のもとで建築された建物であり、屋根や壁面も老朽化しています。
地震が発生して、空き家の外壁などが崩れて、通行人等にケガを負わせた場合、私や父はどのような責任を負うことになるのでしょうか。
1 空き家の利用状況
国土交通省は、全国の戸建て住宅の空き家等について利用状況、管理実態などを把握し、空き家に関する基礎資料を得ることを目的として、昭和55年から5年ごとに「空家実態調査」を行っている。
直近の調査結果である「平成26年空家実態調査」によれば、戸建ての空き家の建築時期は、昭和55年以前(旧耐震基準時代)のものが62.3%を占めている。また、管理する頻度は、「月に数回」と「年に数回」とを併せたものが57.4%を占めている。さらに、今後5年間、空き家として利用する割合は21.5%とされており、その主な理由は、「物置として必要」、「解体費用をかけたくない」とされている。
これらの調査結果からは、耐震性能の低い老朽化した建物が、十分な管理をされないまま物置等として利用されている実態が垣間見えるが、このような空き家は、地震等が起きた場合に災害の原因となりうる。
そこで今回は、地震が起きた場合の空き家の管理責任について検討することとしたい。
2 地震と工作物責任(民法第717条)
(1) 工作物責任の判断枠組み
前回の解説のとおり、民法第717条第1項は、工作物の設置又は保存の瑕疵によって生じた損害について、その占有者に第一次的責任を負わせ、占有者が責任を負わない場合に、所有者に無過失責任を負わせている。
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