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【STEP5】持分法会計における資本連結
本フロー・チャートでは、以下のような項目を「持分法会計における資本連結」とする。
(1) 持分法適用時の資本連結
① 一括取得における資本連結
(ⅰ) 関連会社の資産・負債の時価評価
(ⅱ) 投資と資本の相殺
(ⅲ) 非投資会社持分の認識
(ⅳ) のれん(又は負ののれん)の計上
② 段階取得における資本連結
(ⅰ) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金
(ⅱ) 関連会社の資産・負債の時価評価
(ⅲ) 投資と資本の相殺
(ⅳ) 非投資会社持分の認識
(ⅴ) のれん(又は負ののれん)の計上
(2) 持分法適用後の資本連結
① 当期純損益の按分
② 配当金の消去
③ その他の包括利益の按分
④ のれんの償却
(3) 追加取得
(4) 一部売却(売却後も持分法を適用)
(※) 他にも応用的な論点として、株式売却による関連会社でなくなった場合、増資の場合等あるが、本フロー・チャートでは解説していない。
持分法会計は一行連結ともいうが、考え方は連結会計と同様のため、以下の解説では、まず連結会計と同様に考えた上で(実際に会計処理するのではなく、あくまでも考え方である)、持分法における会計処理(実際の会計処理)を解説している箇所がある。当該箇所には、【連結会計と同様の考え方】と記載している。
(1) 持分法適用時の資本連結
持分法会計における資本連結も大きく持分法適用時と持分法適用後に分けることができる。
また、持分法適用時の資本連結は「一括取得」と「段階取得」に分けて考えることができる。
① 一括取得における資本連結
一括取得とは、例えば関連会社株式を一度で20%以上取得した場合などが該当する。
一括取得における資本連結では「のれん(又は負ののれん)を認識(計上ではない)」するために、以下の4つを検討する。
(ⅰ) 関連会社の資産・負債の時価評価を行う。
(ⅱ) 投資会社の投資(関係会社株式)と関連会社の資本を相殺する。
(ⅲ) 非投資会社持分を認識する。
(ⅳ) 上記(ⅱ)、(ⅲ)の結果、差額が生じた場合は、のれん(又は負ののれん)を認識する。
(ⅰ) 関連会社の資産・負債の時価評価
通常、資産を購入するときに、時価を考慮する。したがって、関連会社株式を取得する時も時価を考慮するはずである。
したがって、持分法適用時には、関連会社の資産・負債のすべてを持分法適用時の時価で評価する(持分法基準8)。関連会社は「部分時価評価法」という方法で評価する(持分法指針6-2)。
なお、非連結子会社は連結子会社と同様に「全面時価評価法」で評価する。詳細は、第7回【STEP6】参照。
部分時価評価法には、原則法と簡便法がある。
【原則法】
関連会社の資産及び負債のうち投資会社持分に対応する部分を、株式の取得日ごとに当該日の時価で評価する。持分法適用開始日までに株式を段階的に取得している場合には、関連会社の資産及び負債を株式の取得日ごとに当該日(持分法適用開始日に一括取得した場合は、持分法適用開始日)の時価で評価する(持分法指針6-2)。
【簡便法】
株式の段階取得に係る計算の結果が原則法によって処理した場合と著しく相違しないときには、持分法適用開始日における時価を基準として、関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分を一括して評価することができる。
この簡便法は、上記の場合のほか、過去の段階的な株式取得時の詳細なデータが入手できず、投資額と資本持分額の調整計算をある一定時点を基準日として行わざるを得ない場合にも認められる(持分法指針6-3)。
時価評価の金額と個別貸借対照表上の金額の差額のうち、投資会社持分に対応する部分の金額(税効果額控除後)は評価差額として認識する。
【連結会計と同様の考え方】
(*1) (時価-帳簿価額)×投資会社持分比率
(*2) (*1)×(1-法定実効税率)
(*3) (*1)× 法定実効税率
上記で認識した評価差額及び繰延税金負債は、連結財務諸表に計上されることはない。あくまでも、のれん(又は負ののれん)を認識するためのものである。
(ⅱ) 投資と資本の相殺
投資会社の投資(関係会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が投資会社から関連会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。
したがって、投資会社の投資と関連会社の資本を相殺する必要がある。
ここで、関連会社の資本には、連結子会社と同様に以下が含まれる。
(ア) (個別財務諸表の修正後の)個別貸借対照表上の純資産の部における株主資本
(イ) 個別貸借対照表上の純資産の部における評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定等)
(ウ) 資産及び負債の時価と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)・・・上記(ⅰ)参照
(※) 資本には新株予約権は含まれない。
なお、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、連結会計では、連結財務諸表上、発生した事業年度の費用として処理するが、関連会社株式を取得(追加取得を含む)した場合、個別財務諸表及び連結財務諸表とも、取得関連費用は関連会社株式の取得原価に含まれる(持分法指針36-4)。
(ⅲ) 非投資会社持分の認識
関連会社の資本(評価差額を除く)のうち投資会社に帰属する部分を「投資会社持分」という。また、本フロー・チャートでは、投資会社に帰属しない部分(投資会社以外の株主に帰属する部分)を、「非投資会社持分」とする。
のれん(又は負ののれん)を認識するため、非投資会社持分を認識する。
(ⅳ) のれん(又は負ののれん)の認識
投資会社が関連会社株式を取得するとき、関連会社の資本の金額よりも高く購入したり、安く購入したりする。投資会社の関連会社への投資額=関連会社の資本になるとは限らない。
そのため、投資会社の関連会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去をすると、差額が生じる。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(持分法基準11)。会計処理の考え方は連結会計と同様である。
【連結会計と同様の考え方】
(*1) 取得原価
(*2) 関連会社の資本(評価差額を除く)×非投資会社持分比率
(*3) 関連会社の株主資本
(*4) (時価-帳簿価額)×投資会社持分比率×(1-法定実効税率)
(*5) 差額
持分法会計上、のれん(負ののれん)は認識するが、連結貸借対照表に計上されることはない。
ただし、のれんは、原則として、20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却する。負ののれんは、発生時の損益として計上する(持分法指針9)。そして、のれん償却額、負ののれんの発生額は、「持分法による投資損益」に含めて表示する(持分法指針10)。
(イ) のれんの償却
のれんの償却の会計処理は以下のとおりである。
【連結会計と同様の考え方】
【会計処理】
(*1) 償却額
(ロ) 負ののれんの計上
負ののれんの計上は以下のようになる。
【会計処理】
(*2) 負ののれん発生額
《設例》持分法適用時の資本連結
(前提条件)
- 当期に投資会社が関連会社株式20%を300で一括で取得した。
- 持分法適用時の関連会社の資本は株主資本800、評価差額20である。
- のれんの償却期間は10年である。
【当期(連結会計と同様の考え方)】
以下の仕訳によりのれんを認識する。
(*1) 取得原価(=個別上の簿価)
(*2) 800×80%=640
(*3) 持分法上の簿価300(=800×20%+20+120)
(*4) 差額
【翌期(のれんの償却のみ)】
(*1) のれん120÷10年=12
(注) 「個別上の簿価」とは、個別財務諸表上の関連会社株式の金額をいう。「持分法上の簿価」とは、「関連会社の資本(評価差額を除く)に対する投資会社持分」、「評価差額」と「のれん未償却残高」の合計をいう。なお、持分法適用時には、個別上の簿価=持分法上の簿価となる。
② 段階取得における資本連結
段階取得とは、例えば関連会社株式を二度以上の取得により20%以上保有した場合などが該当する。
段階取得における資本連結でも「のれん(又は負ののれん)を認識(計上ではない)」するために、以下の5つを検討する。
(ⅰ) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金を取り込む。
(ⅱ) 関連会社の資産・負債の時価評価を行う。
(ⅲ) 投資会社の投資(関係会社株式)と関連会社の資本を相殺する。
(ⅳ) 非投資会社持分を認識する。
(ⅴ) 上記(ⅱ)、(ⅲ)の結果、差額が生じた場合は、のれん(又は負ののれん)を認識する。
(ⅰ) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金
当期において持分法の適用となった関連会社の利益剰余金のうち、株式の段階的取得に伴い生じた取得後利益剰余金の持分法適用日における投資会社持分額は、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の区分に「持分法適用会社の増加に伴う利益剰余金増加高(又は減少高)」等の科目をもって表示する(持分法指針32)。
【会計処理】
(*1) 持分法適用開始年度よりも前に発生した取得後利益剰余金(のれんの償却額控除後)
(ⅱ) 関連会社の資産・負債の時価評価
通常、資産を購入するときに、時価を考慮する。したがって、関連会社株式を取得する時も時価を考慮するはずである。
したがって、持分法適用時には、関連会社の資産・負債のすべてを持分法適用時の時価で評価する(持分法基準8)。関連会社は「部分時価評価法」という方法で評価する(持分法指針6-2)。詳細は、上記①(ⅰ)参照。
(ⅲ) 投資と資本の相殺
投資会社の投資(関係会社株式の取得)は企業グループで見ると、単に金銭が投資会社から関連会社へ移動しているにすぎない。つまり、企業グループ内の内部取引にすぎない。したがって、投資会社の投資と関連会社の資本を相殺する必要がある。詳細は、上記①(ⅱ)参照。
(ⅳ) 非投資会社持分の認識
のれん(又は負ののれん)を認識するため、非投資会社持分を認識する。詳細は、上記①(ⅲ)参照。
(ⅴ) のれん(又は負ののれん)の認識
投資会社が関連会社株式を取得するとき、関連会社の資本の金額よりも高く購入したり、安く購入したりする。投資会社の関連会社への投資額=関連会社の資本になるとは限らない。
そのため、投資会社の関連会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去をすると、差額が生じる。この場合に、借方に生じた差額を「のれん」という。貸方に生じた差額を「負ののれん」という(持分法基準11)。会計処理の考え方は連結会計と同様である。詳細は、上記①(ⅳ)参照。
(2) 持分法適用後の資本連結
持分法適用後の資本連結では、例えば、以下のような検討が必要である。
① 当期純損益の按分
② 配当金の消去
③ その他の包括利益の按分
④ のれんの償却
① 当期純損益の按分
関連会社が獲得した利益のうち、投資会社の持分相当額を連結財務諸表に取り込む。
具体的には、持分法適用日以降における関連会社の純利益又は純損失のうち投資会社の持分相当額を算定して、投資の額(投資有価証券勘定)を増額又は減額し、当該増減額を「持分法による投資損益」に含める(持分法指針10)。
【会計処理】
(*1) 関連会社の当期純利益×投資会社持分比率
② 配当金の消去
配当は、関連会社の過去の利益から行われる。そして、過去の利益は、その利益が発生した時点で投資会社に帰属している。帰属した時には、
として連結財務諸表に計上している。
他方、関連会社から投資会社へ配当が行われた時に受取配当金として計上してしまうと、既に利益を取り込んでいる上に、受取配当金も取り込んでしまい、二重計上になってしまう。そのため、受取配当金を消去する必要がある。
また、配当により利益剰余金(資本)が減少し、投資会社持分も減少するから、投資勘定(投資有価証券勘定)を減少させる(持分法基準14)。
【会計処理】
(*1) 関連会社の配当金総額×投資会社持分比率
③ その他の包括利益の按分
上記①の当期純損益と同様に、持分法適用日以降に発生したその他の包括利益(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額等)のうち、投資会社の持分に相当する額を算定して、投資の額(投資有価証券勘定)を増額又は減額する(持分法指針10-2)。
また、持分法会計では、単純合算を行わないため、投資有価証券の相手科目はその他の包括利益の各勘定科目を使用する。
(ⅰ) その他有価証券評価差額金の場合
【会計処理】
(*1) 「当期末のその他有価証券評価差額金-前期末のその他有価証券評価差額金」×投資会社持分比率
(ⅱ) 退職給付に係る調整累計額の場合
【会計処理】
(*1) 「当期末の退職給付に係る調整累計額-前期末の退職給付に係る調整累計額」×投資会社持分比率
④ のれんの償却
のれんは、原則として、その計上後20年以内に、定額法その他合理的な方法により償却しなければならない(持分法指針9)。詳細は、上記(1)①(ⅳ)参照。
(3) 追加取得
追加取得とは、前期末に20%株式を取得し、関連会社となった後に、当期末にさらに10%取得した場合等の、持分法適用後にさらに株式を取得した場合(子会社になる場合を除く)をいう。
追加取得すると、非投資会社の持分比率が減少し、投資会社の持分比率が増加するため、関連会社の資本に対する非投資会社持分が減少し、投資会社持分が増加する。
また、関連会社の時価評価は、部分時価評価法により行われるため、追加取得持分について、株式の取得の都度、時価評価する。
そして、追加取得によって増加した投資会社持分は、追加投資額と相殺する。この相殺によって生じる差額はのれん(又は負ののれん)として認識する(持分法指針16)。連結会計と異なり、資本剰余金として認識するわけではない。
【連結会計と同様の考え方】
(*1) (時価-帳簿価額)× 追加取得比率
(*2) (*1)×(1-法定実効税率)
(*3) (*1)× 法定実効税率
【連結会計と同様の考え方】
(*4) 追加取得した関連会社株式の取得原価
(*5) 関連会社の資本(評価差額を除く)×追加取得比率
(*6) 差額
【会計処理】
追加取得時には、のれんを認識するのみであり、特段の会計処理は行わず、その後、償却を行う。負ののれんを認識した場合には、発生時の損益として計上する。会計処理は上記(1)①(ⅳ)と同様である。
(4) 一部売却(売却後も持分法を適用)
一部売却(売却後も持分法を適用)とは、前期末に30%の株式を保有していて、当期末に10%売却した場合等の、売却後も影響力が続き、持分法を適用する場合をいう。
一部売却すると、投資会社の持分比率が減少し、非投資会社の持分比率が増加するため、関連会社の資本(評価差額を除く)に対する投資会社持分が減少し、非投資会社持分が増加する。また、評価差額及びのれん未償却残高のうち、売却した部分も取り崩す。
そして、売却した株式と「一部売却によって減少した投資会社持分、評価差額及びのれん未償却残高の売却部分の合計額」の差額は、売却損益の修正として会計処理する。
なお、当該差額のうち、関連会社が計上しているその他の包括利益累計額に係る部分については、売却損益の修正には含めず、連結財務諸表に計上したその他の包括利益累計額(上記(2)③参照)のうち、売却した持分に相当する金額を消去する(持分法指針17)。
【連結会計と同様の考え方】
(*1) 関連会社株式の取得原価×売却比率÷売却前投資会社持分比率
(*2) 売却時の関連会社の資本(評価差額を除く)×売却比率
(*3) 売却時の評価差額×売却比率÷売却前投資会社持分比率
(*4) 売却時ののれん未償却残高×売却比率÷売却前投資会社持分比率
(*5) 連結財務諸表に計上している関連会社のその他有価証券評価差額金×売却比率÷売却前投資会社持分比率
(*6) 差額
【会計処理】
(*7) 差額