空き家をめぐる法律問題
【事例10】
「空き家の所有者が行方不明の場合の遺産分割協議」
弁護士 羽柴 研吾
- 事 例 -
祖母が生前居住していた建物は、祖母名義のまま空き家になっています。祖母の相続人は、私の父を含む兄妹5人ですが、そのうち1人は連絡先も分からず行方不明となっています。私の父は、兄妹と空き家の遺産分割協議をせず亡くなりました。
私は、空き家が老朽化しており、また昨今の風水害の被害を受けていることもあり、早急に遺産分割協議をしておきたいと考えています。どのような方法でどのような遺産分割協議をすることが考えられるでしょうか。
(※) なお、本件では相続放棄の可能性はないものとする。
1 はじめに
近時、相続が発生しているにもかかわらず、遺産分割協議や相続登記が行われずに放置されている空き家が問題となっている(相続登記の問題については【事例9】を参照)。
この中には、遺産分割協議が行われないまま二次相続が発生している場合もある。孫の世代が相続人となる場合には、相続人数が増えるだけでなく、人間関係も希釈化され、お互いに音信不通で連絡先を把握していないこともある。一方で、遺産分割をせず老朽化した空き家を放置すると、民事上の不法行為責任や行政上の法的責任を追及される可能性がある。
そこで今回は、相続人の中に行方不明者がいる場合に、他の相続人が、どのような方法で、どのような遺産分割協議を行うことができるか検討することとしたい。
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