谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第36回】
「錯誤に基づく租税負担選択権の行使と通常の更正の請求の許容性」
-歯科医師概算経費控除「錯誤」事件・最判平成2年6月5日民集44巻4号612頁の意義と射程-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
納税者が提出した納税申告書に係る課税標準等又は税額等の記載の中に、納税者に不利な一定の過誤(税通23条1項1号~3号参照。以下「過誤要件」という)が存在する場合、納税者は納税申告等の過誤是正措置としての更正の請求をすることができる。この場合において、納税者が法定申告期限から5年以内に過誤要件の充足に気がついたときに行うことができる更正の請求(税通23条1項)を通常の更正の請求といい、法定申告期限から5年を経過した日以後に過誤要件の充足に気がついたときに、一定のいわゆる後発的理由(同条2項1号~3号)の発生を理由としてのみ行うことができる更正の請求(同項)を特別の更正の請求という(この用語法について拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【133】~【135】参照)。
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