谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第46回】
「所得税における「時間」」
-生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
今回は、生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁(以下「平成22年最判」という)を取り上げ、所得税における「時間」という観点に着目してこの判決を検討してみたい。
筆者の知る限りでは、平成22年最判ほど「時間」が問題になった判決はこれまでなかったように思われる。平成22年最判の実体的判断内容に関わる「時間」の問題は後のⅡ・Ⅲで検討することにして、ここでは、平成22年最判は、昭和43年に所得税個別通達「家族収入保険の保険金に関する課税について」(昭和43年3月官審(所)2、官審(資)9)が発遣されその後40年以上の長年にわたって生命保険年金(年金方式により受け取る生命保険金)について行われてきた課税実務の取扱いを違法とした結果、過去にその取扱いを受けてきた他の事案にも広範かつ甚大な影響を及ぼすことになり、平成23年度[6月]税制改正による特別還付金支給制度(令和元年度税制改正前措置法97条の2)及び特別還付金に係る更正の請求の特例(同41条の20の2)の創設につながったことを指摘しておく。このことは、還付請求権の消滅時効(税通74条1項)を実質的に10年に延長するのと同じ結果をもたらした。
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