公開日: 2025/02/27 (掲載号:No.608)
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谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第46回】「所得税における「時間」」-生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基本判例

【第46回】

「所得税における「時間」」

-生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

今回は、生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁(以下「平成22年最判」という)を取り上げ、所得税における「時間」という観点に着目してこの判決を検討してみたい。

筆者の知る限りでは、平成22年最判ほど「時間」が問題になった判決はこれまでなかったように思われる。平成22年最判の実体的判断内容に関わる「時間」の問題は後ので検討することにして、ここでは、平成22年最判は、昭和43年に所得税個別通達「家族収入保険の保険金に関する課税について」(昭和43年3月官審(所)2、官審(資)9)が発遣されその後40年以上の長年にわたって生命保険年金(年金方式により受け取る生命保険金)について行われてきた課税実務の取扱いを違法とした結果、過去にその取扱いを受けてきた他の事案にも広範かつ甚大な影響を及ぼすことになり、平成23年度[6月]税制改正による特別還付金支給制度(令和元年度税制改正前措置法97条の2)及び特別還付金に係る更正の請求の特例(同41条の20の2)の創設につながったことを指摘しておく。このことは、還付請求権の消滅時効(税通74条1項)を実質的に10年に延長するのと同じ結果をもたらした。

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税法基本判例

【第46回】

「所得税における「時間」」

-生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

今回は、生命保険年金二重課税訴訟・最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁(以下「平成22年最判」という)を取り上げ、所得税における「時間」という観点に着目してこの判決を検討してみたい。

筆者の知る限りでは、平成22年最判ほど「時間」が問題になった判決はこれまでなかったように思われる。平成22年最判の実体的判断内容に関わる「時間」の問題は後ので検討することにして、ここでは、平成22年最判は、昭和43年に所得税個別通達「家族収入保険の保険金に関する課税について」(昭和43年3月官審(所)2、官審(資)9)が発遣されその後40年以上の長年にわたって生命保険年金(年金方式により受け取る生命保険金)について行われてきた課税実務の取扱いを違法とした結果、過去にその取扱いを受けてきた他の事案にも広範かつ甚大な影響を及ぼすことになり、平成23年度[6月]税制改正による特別還付金支給制度(令和元年度税制改正前措置法97条の2)及び特別還付金に係る更正の請求の特例(同41条の20の2)の創設につながったことを指摘しておく。このことは、還付請求権の消滅時効(税通74条1項)を実質的に10年に延長するのと同じ結果をもたらした。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」

第1回~第20回

第21回~

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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