公開日: 2017/06/29 (掲載号:No.224)
文字サイズ

平成29年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第1回】「非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し」

筆者: 足立 好幸

平成29年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第1回】

「非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

連載の目次はこちら

~はじめに~

本年も連結納税適用法人を対象に、平成29年度税制改正の概要を解説したい。

連結納税適用法人に関する税制は、次の4種類に分類される。

税制の分類 取扱い項目 ① 連結納税特有の取扱い 損益通算、連結欠損金、時価評価、連結子法人株式の帳簿価額修正など単体納税では制度自体が存在しない連結納税特有の取扱い ② 連単共通の税制であるが、単体納税と異なる取扱い(連結グループ全体で計算する取扱い) 受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制など単体納税にも同じ制度が存在するが、連結納税グループでの全体計算と個別帰属額の計算を行う税務上の取扱い ③ 連単共通の税制であるが、単体納税と異なる取扱いい(各連結法人単位で計算する取扱い) 貸倒引当金など単体納税にも同じ制度が存在し、単体納税と同様に各連結法人を計算単位とするが、連結法人間の負債利子を除くなど一部について単体納税とは異なる税務上の取扱い ④ 単体納税と同一の取扱い 減価償却、繰延資産、一括償却資産、賞与引当金、役員給与など単体納税と同じ取扱いとなるもの

平成29年度税制改正では、連結納税特有の取扱いに関する改正として、「連結納税開始・加入時の時価評価の対象から帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する」(後述)と、「スクイーズアウトにより完全子法人化した連結子法人が特定連結子法人に該当する」(次回解説)という2つの改正が実現した。

この2つの改正は、連結納税の採用と加入を後押しするという意味で、非常に大きな改正となっている。

また、それ以外にも、研究開発税制と所得拡大促進税制の見直し、地域未来投資促進税制の創設(以上、に分類)、タックス・ヘイブン税制の総合的見直し(に分類)などがあり、今年度も連結納税適用法人にとって影響が大きい改正となっている。

連結納税適用法人に関係する税制改正については、専門誌等でも「連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われています。」という一言で片づけられてしまうことも多く、連結納税適用法人は、単体納税の税制改正の内容を参考に連結納税ではどう取り扱われるのか?を自ら確認しなくてはいけないことも多い。

そこで、本稿では、連結納税適用法人に関係する改正項目について、その具体的な取扱いと実務に与える影響を解説していくこととする(単体納税と同様の取扱いとなる改正については適宜割愛させていただくので、他稿を参照されたい)。

なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

 

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

平成29年10月1日以後に終了する事業年度終了の時に有する資産について、連結納税開始・加入時の時価評価の対象から「帳簿価額が1,000万円未満の資産」を除外する(新法令122の12①四、新法法61の11①、61の12①、平成29年改正法令附則1一、15)。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

平成29年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第1回】

「非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

連載の目次はこちら

~はじめに~

本年も連結納税適用法人を対象に、平成29年度税制改正の概要を解説したい。

連結納税適用法人に関する税制は、次の4種類に分類される。

税制の分類 取扱い項目 ① 連結納税特有の取扱い 損益通算、連結欠損金、時価評価、連結子法人株式の帳簿価額修正など単体納税では制度自体が存在しない連結納税特有の取扱い ② 連単共通の税制であるが、単体納税と異なる取扱い(連結グループ全体で計算する取扱い) 受取配当等の益金不算入制度、研究開発税制、所得拡大促進税制など単体納税にも同じ制度が存在するが、連結納税グループでの全体計算と個別帰属額の計算を行う税務上の取扱い ③ 連単共通の税制であるが、単体納税と異なる取扱いい(各連結法人単位で計算する取扱い) 貸倒引当金など単体納税にも同じ制度が存在し、単体納税と同様に各連結法人を計算単位とするが、連結法人間の負債利子を除くなど一部について単体納税とは異なる税務上の取扱い ④ 単体納税と同一の取扱い 減価償却、繰延資産、一括償却資産、賞与引当金、役員給与など単体納税と同じ取扱いとなるもの

平成29年度税制改正では、連結納税特有の取扱いに関する改正として、「連結納税開始・加入時の時価評価の対象から帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する」(後述)と、「スクイーズアウトにより完全子法人化した連結子法人が特定連結子法人に該当する」(次回解説)という2つの改正が実現した。

この2つの改正は、連結納税の採用と加入を後押しするという意味で、非常に大きな改正となっている。

また、それ以外にも、研究開発税制と所得拡大促進税制の見直し、地域未来投資促進税制の創設(以上、に分類)、タックス・ヘイブン税制の総合的見直し(に分類)などがあり、今年度も連結納税適用法人にとって影響が大きい改正となっている。

連結納税適用法人に関係する税制改正については、専門誌等でも「連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われています。」という一言で片づけられてしまうことも多く、連結納税適用法人は、単体納税の税制改正の内容を参考に連結納税ではどう取り扱われるのか?を自ら確認しなくてはいけないことも多い。

そこで、本稿では、連結納税適用法人に関係する改正項目について、その具体的な取扱いと実務に与える影響を解説していくこととする(単体納税と同様の取扱いとなる改正については適宜割愛させていただくので、他稿を参照されたい)。

なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

 

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

平成29年10月1日以後に終了する事業年度終了の時に有する資産について、連結納税開始・加入時の時価評価の対象から「帳簿価額が1,000万円未満の資産」を除外する(新法令122の12①四、新法法61の11①、61の12①、平成29年改正法令附則1一、15)。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

*  *  *

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷令和3年度税制改正(全7回)

▷令和2年度税制改正(全9回)

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

筆者紹介

足立 好幸

(あだち・よしゆき)

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト

グループ通算制度・連結納税制度・組織再編税制を専門にグループ企業の税制最適化、企業グループ税制に係る業務を行う。

著書に、『令和6年10月改訂 プロフェッショナル グループ通算制度』『グループ通算制度への移行・採用の有利・不利とシミュレーション』『グループ法人税制Q&A』『M&A・組織再編のスキーム選択』(以上、清文社)、『グループ通算制度の実務Q&A』『グループ通算制度の税効果会計』『早わかり 連結納税制度の見直しQ&A-グループ通算制度の創設で何が変わる?』『ケーススタディでわかる連結納税申告書の作り方』『連結納税の組織再編税制ケーススタディ』『連結納税の清算課税ケーススタディ』『連結納税の欠損金Q&A』『連結納税導入プロジェクト』(以上、中央経済社)など多数。
 

関連書籍

法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

プロフェッショナル グループ通算制度

公認会計士・税理士 足立好幸 著

詳解 組織再編会計Q&A

公認会計士 布施伸章 著

重点解説 法人税申告の実務

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

サクサクわかる! M&Aの税務

公認会計士・税理士 佐藤信祐 著

中小企業の事業承継

税理士 牧口晴一 著 名古屋商科大学大学院教授 齋藤孝一 著

演習法人税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

【電子書籍版】法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

〔目的別〕組織再編の最適スキーム

公認会計士・税理士 貝沼 彩 著 公認会計士・税理士 北山雅一 著 税理士 清水博崇 著 司法書士・社会保険労務士 齊藤修一 著

組織再編税制大全

公認会計士・税理士 佐藤信祐 著

詳解 グループ通算制度Q&A

デロイト トーマツ税理士法人 稲見誠一・大野久子 監修

税法みなし規定の適用解釈と税務判断

税理士 野田扇三郎 著 税理士 山内利文 著 税理士 安藤孝夫 著 税理士 三木信博 著

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

弁護士・税理士 米倉裕樹 著 弁護士・税理士 中村和洋 著 弁護士・税理士 平松亜矢子 著 弁護士 元氏成保 著 弁護士・税理士 下尾裕 著 弁護士・税理士 永井秀人 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#