公開日: 2016/06/30 (掲載号:No.175)
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金融・投資商品の税務Q&A 【Q1】「上場外国株式(外貨建)を譲渡した場合の譲渡損益及び為替差損益の取扱い」

筆者: 箱田 晶子

金融投資商品税務

【Q1】

「上場外国株式(外貨建)を譲渡した場合の

譲渡損益及び為替差損益の取扱い」

 

PwC税理士法人
金融部 ディレクター
税理士 箱田 晶子

 

-はじめに-

この連載では、平成28年から施行された金融所得課税の一体化(公社債税制の変更、損益通算範囲の拡大)を受け、税理士が判断に迷いやすい各種金融所得に関する税務上の取扱いについて、Q&A形式で解説することとする。
(なお、本連載内の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解である。)

[Q]

私(居住者たる個人)は保有している上場外国株式について国内証券会社への売委託により譲渡しました。譲渡対価はドル建で支払われましたが、譲渡所得等の金額の計算はどのように行えばいいでしょうか。

また、株式の購入時と売却時の為替レートの差から生じる為替差損益はどのように取り扱われますか。

  • 取得価額:10,000ドル
  • 取得時の為替レート(TTS):100円/ドル(円からドルへの交換と株式の取得は同日)
  • 売却価額:12,000ドル
  • 売却時の為替レート(TTB):120円/ドル

[A]

上場外国株式の取得価額及び譲渡対価をそれぞれ日本円ベースに引き直して計算した金額が、上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象となります。

為替差損益については、上場株式等の譲渡所得等の計算上含まれて計算されるため、別途為替差損益として認識する必要はありません。

検 討

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たっては、株式等の譲渡対価の額が外貨で表示されて、当該対価の額を日本円又は外貨で支払うこととされている場合は、外貨で表示されている対価の金額を約定日の為替レートで換算した日本円の金額により譲渡収入を計算することとされています。

この場合に使用する為替レートは、対価の支払をする者(本件の場合、国内証券会社)の主要取引金融機関(その支払者がTTB(電信買相場)を公表している場合にはその支払者)の当該外貨に係るTTBにより日本円に換算した金額によります。一方、取得価額は、取得した株式の外貨金額を取得時のTTS(電信売相場)で円換算した金額となります。

したがって、為替差損益部分については、株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額に含められることになり、別途雑所得として区分する必要はありません。

おたずねの場合、以下の金額が上場株式等に係る譲渡所得等の金額として取り扱われます(購入手数料や売却手数料はないものとします)。

〈計算例〉
  • 取得価額:10,000ドル × 100円/ドル = 1,000,000円
  • 譲渡収入:12,000ドル × 120円/ドル = 1,440,000円
  • 譲渡所得等:1,440,000 - 1,000,000 = 440,000円

譲渡所得等とされる金額が、上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の対象となります。

【参考(関連条文)】
措法第37条の11、第37条の10
措通37の10・37の11共-6

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

金融投資商品税務

【Q1】

「上場外国株式(外貨建)を譲渡した場合の

譲渡損益及び為替差損益の取扱い」

 

PwC税理士法人
金融部 ディレクター
税理士 箱田 晶子

 

-はじめに-

この連載では、平成28年から施行された金融所得課税の一体化(公社債税制の変更、損益通算範囲の拡大)を受け、税理士が判断に迷いやすい各種金融所得に関する税務上の取扱いについて、Q&A形式で解説することとする。
(なお、本連載内の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解である。)

[Q]

私(居住者たる個人)は保有している上場外国株式について国内証券会社への売委託により譲渡しました。譲渡対価はドル建で支払われましたが、譲渡所得等の金額の計算はどのように行えばいいでしょうか。

また、株式の購入時と売却時の為替レートの差から生じる為替差損益はどのように取り扱われますか。

  • 取得価額:10,000ドル
  • 取得時の為替レート(TTS):100円/ドル(円からドルへの交換と株式の取得は同日)
  • 売却価額:12,000ドル
  • 売却時の為替レート(TTB):120円/ドル

[A]

上場外国株式の取得価額及び譲渡対価をそれぞれ日本円ベースに引き直して計算した金額が、上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象となります。

為替差損益については、上場株式等の譲渡所得等の計算上含まれて計算されるため、別途為替差損益として認識する必要はありません。

検 討

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たっては、株式等の譲渡対価の額が外貨で表示されて、当該対価の額を日本円又は外貨で支払うこととされている場合は、外貨で表示されている対価の金額を約定日の為替レートで換算した日本円の金額により譲渡収入を計算することとされています。

この場合に使用する為替レートは、対価の支払をする者(本件の場合、国内証券会社)の主要取引金融機関(その支払者がTTB(電信買相場)を公表している場合にはその支払者)の当該外貨に係るTTBにより日本円に換算した金額によります。一方、取得価額は、取得した株式の外貨金額を取得時のTTS(電信売相場)で円換算した金額となります。

したがって、為替差損益部分については、株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額に含められることになり、別途雑所得として区分する必要はありません。

おたずねの場合、以下の金額が上場株式等に係る譲渡所得等の金額として取り扱われます(購入手数料や売却手数料はないものとします)。

〈計算例〉
  • 取得価額:10,000ドル × 100円/ドル = 1,000,000円
  • 譲渡収入:12,000ドル × 120円/ドル = 1,440,000円
  • 譲渡所得等:1,440,000 - 1,000,000 = 440,000円

譲渡所得等とされる金額が、上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の対象となります。

【参考(関連条文)】
措法第37条の11、第37条の10
措通37の10・37の11共-6

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

金融・投資商品の税務Q&A

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【Q1】~【Q70】 ※クリックすると表示されます

【Q71】~

筆者紹介

箱田 晶子

(はこだ・あきこ)

PwC税理士法人 金融部 パートナー。 税理士。

金融機関、ファンド等に対し、内外の投資信託、仕組債、リッパケージローン等の金融商品に関する税務上のアドバイス、クロスボーダーのファンド投資ストラクチャー組成に関する税務コンサルティングサービスを数多く行っている。

【主な共著書】
・『第4版 金融・投資商品の税務Q&A』共著(清文社)
・『逐条解説投資信託約款』共著(金融財政事業研究会)
・『投資ストラクチャーの税務(九訂版)』共著(税務経理協会)
・『信託の税務』共著(税務経理協会)
・『法人税重要事例400』共著(税務研究会)

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