〔平成30年3月期〕
決算・申告にあたっての税務上の留意点
【第1回】
「「法人税率の確認」及び「中小企業向け設備投資減税の見直し」」
公認会計士・税理士 新名 貴則
平成30年3月期の決算申告においては、平成29年度税制改正における改正事項を中心として、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。
【第1回】は、適用される法人税率の確認、及び、中小企業の設備投資減税の見直しについて、平成30年3月期決算において留意すべき点を解説する。
1 法人税率は平成29年3月期と同じ
中小法人等において800万円までの課税所得に適用される軽減税率は本来19%だが、平成29年3月期決算申告においては、特例措置により15%に引き下げられていた。この措置は平成29年3月31日までに開始する事業年度が対象であったが、平成29年度税制改正により2年間(平成31年3月31日までに開始する事業年度まで)延長された。したがって、平成30年3月期決算申告においても、15%が適用される。
中小法人等以外の法人の課税所得や、中小法人等において800万円を超える課税所得に適用される法人税率は、平成27年度税制改正、平成28年度税制改正と連続して引き下げられており、平成29年3月期決算申告においては23.4%が適用されていた。平成30年3月31日までに開始する事業年度については23.4%が適用されるため、平成30年3月期決算申告においても23.4%が適用されることになる。
(※) 資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の大法人の完全子会社を除く)
なお、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、法人税率が23.4%から23.2%に引き下げられる。したがって、平成31年3月期決算申告においては23.2%が適用される。
2 中小企業の設備投資に対する優遇税制の見直し
① 「中小企業投資促進税制」の見直しと期間延長
「中小企業投資促進税制」とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、特定の機械装置などを取得又は製作して、指定事業(風俗営業や娯楽業等を除くほぼ全業種)の用に供した場合に、その事業の用に供した事業年度において、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。
平成29年3月31日までに取得等をして事業供用した資産が対象であったが、平成29年度税制改正により、その期限が平成31年3月31日まで2年間延長された。ただし、改正後は適用対象資産から「器具及び備品」が除かれている。
したがって、平成30年3月期決算申告においては「中小企業投資促進税制」の適用が継続され、その適用対象資産は次の通りである。
② 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の期間延長
「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が認定経営革新等支援機関等の指導及び助言を受け、一定の器具備品及び建物附属設備を取得等した場合に、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。この制度の適用を受けるためには、指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類の提出が必要となる。
平成29年3月31日までに取得等をして指定事業に供用した資産が対象であったが、平成29年度税制改正により、その期限が平成31年3月31日まで2年間延長されている。したがって、平成30年3月期の決算申告においては適用が継続される。
③ 「生産性向上設備投資促進税制」の終了
「生産性向上設備投資促進税制」とは、青色申告法人が「生産性向上設備」を取得等して国内の事業の用に供した場合に、特別償却又は税額控除を認める制度である。
この特例は、当初の予定通り平成29年3月31日をもって終了した。したがって、平成30年3月期において取得等及び事業供用した資産には適用されない。
④ 「中小企業経営強化税制」の創設
「中小企業経営強化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得等し指定事業に供用した場合に、即時償却又は税額控除(7%又は10%)を認める制度である。
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象となるため、平成30年3月期の決算申告においては適用があることになる。
(※1) 情報通信業や医療保険業においては、一定の場合に制限あり。
(※2) 医療保険業を行う事業者が取得等するものは除く。
(※3) 複写販売用の原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。
⑤ 適用関係の整理
平成30年3月期決算申告における、中小企業の設備投資に対する優遇税制の適用関係は次の通りである。
(了)
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