公開日: 2020/07/02 (掲載号:No.376)
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令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第2回】「「適用法人の範囲」「適用方法」」

筆者: 足立 好幸

[4] 適用方法

(1) グループ通算制度の開始

① 承認申請

親法人及び子法人が、通算承認を受けようとする場合には、その親法人のグループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始日の3ヶ月前の日までに、その親法人及び子法人の全ての連名で、承認申請書をその親法人の納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出する必要がある(法法64の9②)。

ここで、「通算承認」とは、グループ通算制度の適用に係る国税庁長官の承認をいう。

この場合、グループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始日の前日までにその申請についての通算承認又は却下の処分がなかったときは、その親法人及び子法人の全てについて、その開始日においてその通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じる(法法64の9⑤⑥)。

② 申請の却下

国税庁長官は、承認申請書の提出があった場合において、次のいずれかに該当する事実があるときは、その申請を却下することができる(法法64の9③)。

(イ) 通算予定法人のいずれかがその申請を行っていないこと。

(ロ) その申請を行っている法人に通算予定法人以外の法人が含まれていること。

(ハ) その申請を行っている通算予定法人について、その備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があること等の一定の事実(法法64の9③三イ~ニ)のいずれかに該当すること。

この場合、「通算予定法人」とは、グループ通算制度の適用を受けようとする親法人又は子法人をいう。

③ 親法人の設立事業年度又は設立翌事業年度からの適用方法

親法人の設立事業年度又は設立事業年度の翌事業年度から、グループ通算制度を適用する場合の承認申請期限は次のとおりとなる(法法64の9⑦⑧⑨)。

この場合のグループ通算制度の適用を開始する事業年度を「申請特例年度」という。

一 設立事業年度から適用する場合の設立年度申請期限

次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれか早い日

(ⅰ) 設立事業年度開始日から1ヶ月を経過する日

(ⅱ) 設立事業年度終了日から2ヶ月前の日

二 設立事業年度の翌事業年度から適用する場合の設立翌年度申請期限(※1、2)

次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれか早い日

(ⅰ) 設立事業年度終了日

(ⅱ) 設立事業年度の翌事業年度終了日から2ヶ月前の日

(※1) 設立事業年度が3ヶ月に満たない場合に限る。設立事業年度が3ヶ月以上の場合は、原則どおり、3ヶ月前の日が申請期限となる。

(※2) 親法人が設立事業年度終了時に時価評価法人(時価評価対象法人に該当し、かつ、時価評価資産を有する法人)に該当する場合を除く。この場合で、親法人の設立事業年度が3ヶ月に満たない場合、結果的に設立事業年度の翌事業年度からグループ通算制度を適用することはできない。

この申請年度の特例を適用する場合、通算子法人となる法人のうち、時価評価法人(時価評価法人が発行済株式を直接又は間接に保有する法人を含む)に該当するものは、他の通算子法人のように申請特例年度開始日ではなく、申請特例年度終了日の翌日(つまり、1期遅れで)にグループ通算制度を開始又は加入することになるなど、特別な取扱いが適用される(法法64の9⑩⑫、14⑤⑥⑧)。

そのため、本連載では、この特例を適用する場合の税務上の取扱いは解説の対象外としており、原則どおり、グループ通算制度の適用を開始する日の3ヶ月前の日までに承認申請をした場合の取扱いのみ解説の対象としている。

④ 経過措置

経過措置については次のとおりとなる。

(イ) 連結納税制度の承認を受けている法人については、原則として、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始日において、通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じる(令和2年所法等改正法附則29①)。また、その法人が青色申告の承認を受けていない場合には、同日において青色申告の承認があったものとみなされる(法法125②)。

(ロ) 連結法人は、その連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる(令和2年所法等改正法附則29②)。

(2) グループ通算制度の取りやめ

通算法人は、やむを得ない事情があるときは、国税庁長官の承認を受けてグループ通算制度の適用を受けることをやめることができる。この取りやめの承認を受けた場合には、その承認を受けた日の属する事業年度終了日の翌日から、通算承認の効力は失われる(法法64の10①②③④)。

また、通算親法人が他の内国法人の100%子会社となった場合、通算親法人が解散する場合(合併による解散を含む)、通算子法人がなくなった場合のほか、青色申告の承認の取消しの通知を受けた場合においても、通算承認の効力は失われる(法法64の10⑤⑥、127①②③④)。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
地方法法・・・地方法人税法
地法・・・地方税法
措法・・・租税特別措置法
令和2年所法等改正法・・・所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)
(例)法法57⑪三・・・法人税法57条11項3号

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

令和2年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第2回】

「「適用法人の範囲」
「適用方法」」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

連載の目次はこちら

[3] 適用法人の範囲

グループ通算制度の適用対象となる法人は、適用の承認を受けた「通算親法人(次の法人に限る)及び通算親法人との間に通算親法人による完全支配関係がある通算子法人(次の法人に限る)」の全てとなる(法法64の9①)。

ここで、グループ通算制度の適用範囲となる「完全支配関係」は、完全支配関係のうち、通算除外法人(下記(1)までの法人)及び外国法人が介在しない一定の関係となり、通算法人間の完全支配関係を「通算完全支配関係」という(法法64の9①、2十二の七の七)。

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連載目次

*  *  *

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷令和3年度税制改正(全7回)

▷令和2年度税制改正(全9回)

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

筆者紹介

足立 好幸

(あだち・よしゆき)

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト

グループ通算制度・連結納税制度・組織再編税制を専門にグループ企業の税制最適化、企業グループ税制に係る業務を行う。

著書に、『令和6年10月改訂 プロフェッショナル グループ通算制度』『グループ通算制度への移行・採用の有利・不利とシミュレーション』『グループ法人税制Q&A』『M&A・組織再編のスキーム選択』(以上、清文社)、『グループ通算制度の実務Q&A』『グループ通算制度の税効果会計』『早わかり 連結納税制度の見直しQ&A-グループ通算制度の創設で何が変わる?』『ケーススタディでわかる連結納税申告書の作り方』『連結納税の組織再編税制ケーススタディ』『連結納税の清算課税ケーススタディ』『連結納税の欠損金Q&A』『連結納税導入プロジェクト』(以上、中央経済社)など多数。
 

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