[4] 適用方法
(1) グループ通算制度の開始
① 承認申請
親法人及び子法人が、通算承認を受けようとする場合には、その親法人のグループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始日の3ヶ月前の日までに、その親法人及び子法人の全ての連名で、承認申請書をその親法人の納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出する必要がある(法法64の9②)。
ここで、「通算承認」とは、グループ通算制度の適用に係る国税庁長官の承認をいう。
この場合、グループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始日の前日までにその申請についての通算承認又は却下の処分がなかったときは、その親法人及び子法人の全てについて、その開始日においてその通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じる(法法64の9⑤⑥)。
② 申請の却下
国税庁長官は、承認申請書の提出があった場合において、次のいずれかに該当する事実があるときは、その申請を却下することができる(法法64の9③)。
(イ) 通算予定法人のいずれかがその申請を行っていないこと。
(ロ) その申請を行っている法人に通算予定法人以外の法人が含まれていること。
(ハ) その申請を行っている通算予定法人について、その備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があること等の一定の事実(法法64の9③三イ~ニ)のいずれかに該当すること。
この場合、「通算予定法人」とは、グループ通算制度の適用を受けようとする親法人又は子法人をいう。
③ 親法人の設立事業年度又は設立翌事業年度からの適用方法
親法人の設立事業年度又は設立事業年度の翌事業年度から、グループ通算制度を適用する場合の承認申請期限は次のとおりとなる(法法64の9⑦⑧⑨)。
この場合のグループ通算制度の適用を開始する事業年度を「申請特例年度」という。
一 設立事業年度から適用する場合の設立年度申請期限
⇒次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれか早い日
(ⅰ) 設立事業年度開始日から1ヶ月を経過する日
(ⅱ) 設立事業年度終了日から2ヶ月前の日
二 設立事業年度の翌事業年度から適用する場合の設立翌年度申請期限(※1、2)
⇒次の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれか早い日
(ⅰ) 設立事業年度終了日
(ⅱ) 設立事業年度の翌事業年度終了日から2ヶ月前の日
(※1) 設立事業年度が3ヶ月に満たない場合に限る。設立事業年度が3ヶ月以上の場合は、原則どおり、3ヶ月前の日が申請期限となる。
(※2) 親法人が設立事業年度終了時に時価評価法人(時価評価対象法人に該当し、かつ、時価評価資産を有する法人)に該当する場合を除く。この場合で、親法人の設立事業年度が3ヶ月に満たない場合、結果的に設立事業年度の翌事業年度からグループ通算制度を適用することはできない。
この申請年度の特例を適用する場合、通算子法人となる法人のうち、時価評価法人(時価評価法人が発行済株式を直接又は間接に保有する法人を含む)に該当するものは、他の通算子法人のように申請特例年度開始日ではなく、申請特例年度終了日の翌日(つまり、1期遅れで)にグループ通算制度を開始又は加入することになるなど、特別な取扱いが適用される(法法64の9⑩⑫、14⑤⑥⑧)。
そのため、本連載では、この特例を適用する場合の税務上の取扱いは解説の対象外としており、原則どおり、グループ通算制度の適用を開始する日の3ヶ月前の日までに承認申請をした場合の取扱いのみ解説の対象としている。
④ 経過措置
経過措置については次のとおりとなる。
(イ) 連結納税制度の承認を受けている法人については、原則として、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始日において、通算承認があったものとみなされ、同日からその効力が生じる(令和2年所法等改正法附則29①)。また、その法人が青色申告の承認を受けていない場合には、同日において青色申告の承認があったものとみなされる(法法125②)。
(ロ) 連結法人は、その連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる(令和2年所法等改正法附則29②)。
(2) グループ通算制度の取りやめ
通算法人は、やむを得ない事情があるときは、国税庁長官の承認を受けてグループ通算制度の適用を受けることをやめることができる。この取りやめの承認を受けた場合には、その承認を受けた日の属する事業年度終了日の翌日から、通算承認の効力は失われる(法法64の10①②③④)。
また、通算親法人が他の内国法人の100%子会社となった場合、通算親法人が解散する場合(合併による解散を含む)、通算子法人がなくなった場合のほか、青色申告の承認の取消しの通知を受けた場合においても、通算承認の効力は失われる(法法64の10⑤⑥、127①②③④)。
〔凡例〕
法法・・・法人税法
地方法法・・・地方法人税法
地法・・・地方税法
措法・・・租税特別措置法
令和2年所法等改正法・・・所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)
(例)法法57⑪三・・・法人税法57条11項3号
(了)
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