[9] 利益・損失の二重計上の防止措置
グループ通算制度では、利益・損失の二重計上の防止を強化するため、投資簿価修正を中心に次の取扱いに見直される。① 通算グループ内の通算子法人の株式の評価損益及び通算グループ内の他の通算法人に対する譲渡損益を計上しない(法法25④、33⑤、61の11⑧、法令9①一チ)。
② 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とする(法令119の3⑤、9①六)。
③ 開始・加入をする通算子法人で親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれないものの株式について、株主において時価評価により評価損益を計上する(法法64の11②、64の12②)。
なお、開始・加入後損益通算をせずに2ヶ月以内に通算グループから離脱する法人については、上記①から③までを適用しない(法令24の3、68の3②、119の3⑤、122の14⑯)。
いずれも利益・損失の二重計上の防止を強化するための見直しであるが、実務上、影響が大きいと思われるのが、上記②の見直しである。
グループ通算制度でも、連結納税制度と同様に、通算グループからの離脱時に離脱法人の株式の投資簿価修正を行うことになるが、連結納税制度では、連結法人に該当する期間中の利益積立金額の増減額を帳簿価額修正額とするのに対して、グループ通算制度では、離脱法人株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とすることになる。
この点、株式の取得価額が簿価純資産価額より大きい場合、例えば、過去に多額なのれんを含めて買収した通算子法人の株式を売却する場合、単体納税制度や連結納税制度と比べて、株式譲渡原価が小さくなり、結果、株式売却益が大きく(株式売却損が小さく)なるため、税負担が増えることになる(もちろん、逆のケースもある)。
そのため、子法人の株式の売却を検討しているグループ法人については、グループ通算制度に移行する前に当該株式を売却することを検討する必要が生じてくるだろう(もちろん、逆のケースもある)。