経理担当者のための
ベーシック会計Q&A
【第1回】 金融商品会計①
「有価証券の取得」
─受渡期間内に期末日を含む場合の約定日基準による会計処理
仰星監査法人
公認会計士 石川 理一
日本の会計基準は、国際会計基準とのコンバージェンスが進み、しっかり理解することが非常に難しくなっています。
本連載では、企業の経理担当者の方々のために、複雑になった会計基準を基礎から考え直すことによって、理解を深めることを目的としています。
毎月一つの会計基準について、基礎的な取引に係る仕訳を示しながら解説していきます。今月は金融商品会計です。
なお、毎月最終週は、税務コーナーにて「経理担当者のためのベーシック税務Q&A」を掲載しますので、併せてご覧ください。
Question
当社は、決算期末(3月)近くに、上場会社の有価証券を取得することを予定しています。
今回、約定日は3月30日、受渡日は4月2日と、受渡期間で期末日をまたがる予定になっています。期末時点では有価証券の受渡しが行われていませんが、期末決算になんらかの会計処理をする必要がありますか。
Answer
市場で有価証券を取得した場合、原則として、約定日に有価証券の発生を認識します。
⇒【金融商品会計に関する実務指針(以下「金融商品会計実務指針」)22項】
〈事例による解説〉
売買取引の概要及び決算日(3月31日)の時価は以下のとおりです。また、取得した有価証券は「その他有価証券」に該当するものとします。
約定日:3月30日
有価証券の受渡日:4月2日
売買価額:20,000
3月31日における当該有価証券の時価:19,500
〈会計処理〉
3月30日
(借)投資有価証券 20,000 / (貸)未払金 20,000
3月31日
(借)その他有価証券評価差額金 500 / (貸)投資有価証券 500
4月2日
(借)未払金 20,000 / (貸)現金預金 20,000
※なお、税効果会計に係る会計処理は省略しています。
〈会計処理の解説〉
金融商品に関する会計基準(以下「金融商品会計基準」)では、「金融資産の契約上の権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産又は金融負債の発生を認識しなければならない」(7項)と規定しています。
商品等の売買又は役務提供の対価に係る金銭債権債務は、一般に商品等の受渡し又は役務提供の完了によりその発生を認識しますが、金融商品の取引については、契約締結時においてその発生を認識することになります。
今回の事例では、約定日から期末日までの有価証券の時価の変動リスクが契約当事者に生じることになります。
金融商品に関する会計基準では、有価証券は
① 売買目的有価証券
② 満期保有目的の債券
③ 子会社株式及び関連会社株式
④ その他有価証券
「その他有価証券」は、時価をもって貸借対照表価額とすることになります(金融商品会計基準18項)。
このため、今回の事例では、約定日に有価証券の発生を認識し、決算において約定日から期末日までの時価の変動を適切に帳簿価額に反映させることになります。
「金融商品に関する会計基準」 ※PDFファイル
(了)
「経理担当者のためのベーシック会計Q&A」は、最終週を除き掲載されます。
なお、毎月最終週は「経理担当者のためのベーシック税務Q&A」が掲載されます。
