谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第16回】
「課税要件事実の認定に関する実質主義」
-未経過固定資産税等相当額清算金の性質決定に関する裁判例の検討-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回扱った財産評価も、税法における事実認定であることは前回Ⅳ(おわりに)でも述べたが、税法における事実認定には、ほかに、事実状態・事実行為の確認、法律行為・契約の解釈、公正妥当な会計処理(法税22条4項)の結果の確認も含まれる。これらにおいて認定されるべき課税要件事実とは、課税要件に包摂されるべき事実をいい、それは、課税要件を組成する法律要件要素(課税要件要素 [Steuertatbestandsmerkmal])に高められ抽象化された類型的事実(法律事実)ではなく、法律事実に該当する個々の具体的事実(税法の適用・税法的評価を受ける前のいわゆる「ナマの事実」)を意味する事実的概念である(以上については拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【56】参照)。
今回は、前記の事実認定のうち契約解釈の問題を、未経過固定資産税等相当額清算金(以下本文では単に「清算金」という)の課税上の取扱いに関する裁判例を素材にして、検討することにするが、その検討に入る前に、課税要件事実の認定において妥当する実質主義ないし実質課税の原則について、次のⅡで一般論を整理しておく(税法の解釈について妥当するものも含め実質主義一般については前掲拙著【42】、谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第6回・第20回等参照)。
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