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実務必須の
[重要税務判例]
【第26回】
「意思無能力者の申告義務事件」
~最判平成18年7月14日(集民220号855頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
意思無能力者の申告義務事件
(最判平成18年7月14日(集民220号855頁))
《概要》
今回紹介する判例は、以下のような事案である。
まずAが死亡した。Aの死亡時、Aの妻Bは意思無能力であり、後見人もついていなかった。C・Yは、Aの遺産の分割について協議を行ったが、協議は成立しなかった。Cは、Bに代わって相続税の申告を行い(本件申告)、Bの分の相続税を納付した。なお、Yは、Cのかかる対応に同意してはいない。その後、Bが死亡し、さらにCが死亡した。Cの死亡により、XがCを相続した。
Xは、Cの対応はBについての事務管理に該当するものであり、YはBから法定相続分の割合で費用償還債務を相続しているとして、Yに対し、事務管理に基づく費用償還請求をした。
原審は、Cの対応は事務管理に該当しないとして費用償還請求を認めなかったが、最高裁は、相続税法の関連条文の解釈を示した上で、Cの対応が事務管理に該当しないとは言い切れないとして、原審を破棄し、本件を高裁に差し戻した。
《関係図》
▷争点
本件申告に基づく相続税の納付はBの利益に適うものであったか(本件申告時にBに相続税の申告書の提出義務が発生していたか)。
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