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[無料公開中]さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第17回】「相互タクシー事件」~最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁)~

筆者:菊田 雅裕

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実務必須の

[重要税務判例]

【第17回】

「相互タクシー事件」

~最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

相互タクシー事件

(最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁))

《概要》

X社は、A社の株式を保有していたが、A社の株式につき、増資により、株主に新株引受権が割り当てられることになった。しかし、当時の独占禁止法では、金融業以外の事業を営む会社は、他の会社の株式を取得してはならないと規定されていたため、X社は、A社株式の名義をX社の重役Bに変更し、重役Bに新株割当を受けさせた。

Y税務署長は、X社は重役Bに対し新株引受権に係る経済的利益(プレミアム)を無償で授与したものであって、役員賞与として利益処分したとみるべきであるとして、X社に対し、その利益の金額をX社の所得に加算して、法人税の増額更正処分をした。そこで、X社が、独占禁止法の規定からしてX社は新株引受権を取得できないはずだし、新株引受権は重役Bが原始取得したものであって、そうであればX社の益金と認定することはできないなどとして争ったのが本件である。

最高裁は、益金の発生を肯定せざるを得ないとして、X社の主張を認めなかった。

《関係図》

A社 Y税務署長 ⑥法人税の更正処分 X社 重役B ⑤従前X社が保有していた A社株式の名義を戻す ③A社株式の株主名義の変更 新株取得資金を貸付 ②増資により株主に新株引受権の割当(当時の独占禁止法の制限あり) ④新株割当

▷争点

重役Bが得た新株のプレミアムに相当する利益は、当時の独占禁止法の制限にかかわらず、X社の益金となるか。

▷判決要旨

上記利益は、X社の益金となる。

▷評釈

 一審は、①当時の独占禁止法の規定は、私的独占等の防止のための予防的措置として他の会社の株式の取得を禁止したのみであり、従来からの株主たる地位に基づき一般に当然受けられるはずの経済的利益の喪失を強制するものではない、②新株引受権は元の株式に附随して譲渡の対象となるというべきで、独占禁止法もこの譲渡性を剥奪するものではない、③新株引受権は親株式の価値の増加部分として把握されるべきである、④重役Bは形式的株主にすぎず、実質上の株主はX社であるなどとした上で、上記利益がX社の益金となることを肯定した。

これに対し、二審は、X社が本件のような方法で重役Bに新株を取得させることは可能であるなどとして、X社から重役Bに対する株式の譲渡自体については肯定的な見解を採ったが、X社が、重役Bから、新株取得による利益の反対給付を受けなければ、X社に利得が生じたとは認定できないなどとして、上記利益がX社の益金となることを否定した。

 最高裁は、当時の独占禁止法は、会社自ら増資新株を取得することを許さなかったにせよ、増資により株主一般が受けることができる利益を事実上享受するために採った本件のような行為までを無効とする趣旨ではないとして、X社から重役Bに対する、新株引受権に係る経済的利益の無償譲渡については、一審・二審と同様に肯定的な見解を採った。

そのうえで、移転の対象となった経済的利益は、X社所有のA社株式について生じる新株プレミアムから構成され、その利益の移転は値上がり部分の価値の社外流出を意味するなどとして、当該利益を益金として計上すべきであるとした。また、これについては、反対給付を伴うと否とに関わらないとも述べた。

 当時の独占禁止法の株式取得制限規定との関係については、いずれの判断とも、おおよそ同じような見解を採っていると評価できる。もっとも、裁判時はともかく、新株割当等が行われた当時は、そのような見解は一般的でなかったとの分析もある。

なお、現在も、独占禁止法上一定の取得制限は残存しているが、ご承知のとおり、当時の規定とはもはや別物である。

▷判決後の動向等

当時の法人税法では、内国法人の各事業年度の所得とは、総益金から総損金を控除したものであると規定されていただけであったので、本件のような問題が生じたという側面があったようである。現在の規定からすると、課税庁や最高裁の結論は、自然に導かれるものといえよう。

▷より詳しく学ぶための『参考文献』

  • 最高裁判所判例解説民事篇(昭和41年度)322頁
  • 判例タイムズ196号113頁
  • 判例時報457号31頁
  • 租税法判例実務解説第1版113頁
  • TAINSコード:Z044-1512

(了)

「さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]」は、隔週で掲載されます。

連載目次

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筆者紹介

  • 菊田 雅裕

    (きくた・まさひろ)

    弁護士
    横浜よつば法律税務事務所

    ・平成13年 東京大学法学部卒業
    ・平成16年 司法試験合格
    ・平成18年 弁護士登録
    ・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
    ・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

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