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[無料公開中]さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第41回】「双輝汽船事件」~最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁)~

筆者:菊田 雅裕

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実務必須の

[重要税務判例]

【第41回】

「双輝汽船事件」

~最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

双輝汽船事件

(最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁))

《概要》

X社は海運業を営んでおり、パナマにて100%子会社Aを設立した。しかし、パナマにはA社の事務所はなく、運営は全てX社が行っていた。そして、A社名義の資産・負債、損益は、全てX社に帰属するものとして、法人税等の確定申告を行っていた。

ある事業年度において、A社において欠損が発生したため、X社は、従前どおり、これも自らに帰属するものとして、法人税等の確定申告を行った。これに対し、Y税務署長は、A社は特定外国子会社等(租税特別措置法66条の6第1項・第2項)に該当するが、同条は、A社での欠損をX社の損失に算入することを認めていないとして、X社に対し更正処分を行った。そこでX社が処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。

最高裁は、X社の主張を認めなかった。

《関係図》

▷争点

租税特別措置法66条の6第1項が、特定外国子会社等での未処分所得額を踏まえて算出された一定の金額を、内国法人の所得の計算上益金の額に算入することとしていることから、特定外国子会社等での欠損の金額についても、内国法人の所得の計算上損金の額に算入できるものと解することができるか。

▷判決要旨

租税特別措置法66条の6第1項が、特定外国子会社等での未処分所得額を踏まえて算出された一定の金額を、内国法人の所得の計算上益金の額に算入することとしているからといって、特定外国子会社等での欠損の金額を、内国法人の所得の計算上損金の額に算入できるものと解することはできない。

▷評釈

 租税特別措置法66条の6第2項2号は、特定外国子会社等の未処分所得額につき、過去5年以内の欠損の金額を踏まえた調整をした所得額とする旨定めている。そして、これを踏まえて算出された一定の金額を、内国法人の所得の計算上益金の額に算入することとしている。
 そこで、Y税務署長は、同条は、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、5年間は、未処分所得額の算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制したものであり、したがって、内国法人の所得の金額の計算上、当該欠損の額を損金の額に算入することは禁止されていると主張した。

 これについて、一審は、いわゆるタックス・ヘイブン対策税制の立法趣旨に照らすと、租税特別措置法66条の6は、特定外国子会社等の所得金額に所定の調整を加えた後もなお所得が生じている場合に、一定限度で、内国法人の所得の計算上益金の額に算入する取扱いを規定したものにとどまり、特定外国子会社等に欠損が生じた場合の取扱いまで規定したものではないなどと指摘した。そして、そうであれば、特定外国子会社等の欠損を内国法人の損金の額に算入することが、同条により禁止されているとは解釈できないとして、X社の請求を認めた。

 これに対し、二審は、同様にタックス・ヘイブン対策税制の立法趣旨に言及しつつ、その立法趣旨からすると、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、それを内国法人の損金に算入することを認めず、5年間は、特定外国子会社等の未処分所得の算出において控除すべきものとして繰り越すことを強制していると解して、Y税務署長とほぼ同様の見解を採り、X社の請求を棄却した。

 最高裁は、二審の結論を維持したものの、特定外国子会社等に欠損が生じた場合には、これを翌事業年度以降の当該特定外国子会社等における未処分所得の金額の算定に当たり5年を限度として繰り越して控除することが認められているにとどまるものというべきであって、欠損の金額を内国法人の損金の額に算入することができると解することはできないと述べており、二審とはやや異なる表現をした。
 古田裁判官は、補足意見において、法人は、法律により、損益の帰属すべき主体として設立が認められるものであり、その事業として行われた活動に係る損益は、特殊な事情がない限り、法律上その法人に帰属するものと認めるべきであると指摘した。そして、A社における船舶の保有・その運用等は、すべてX社の決定によるものだとしても、法律上A社の事業活動と認めるべきものである以上、これに係る損益もA社に帰属するべきものであると述べた。法人税は原則として各法人に課せられるものであることからすれば素直な解釈であるし、本件についても、こうした基本的な理解を踏まえて検討を進めれば、素直な結論を早く導けたのかもしれない(なお、補足意見は、もちろん、租税特別措置法66条の6にも言及している)。
 最高裁の判決理由でも、当てはめ部分において、A社はX社とは別法人として独自の活動を行っていたとみるべきである旨言及しているが、上記の補足意見の影響を受けたものであろう。

▷判決後の動向等

租税特別措置法66条の6は、タックス・ヘイブン対策としては法人税法11条(実質所得者課税の原則)では限界があることを踏まえて定められた制度である。

もっとも、法人税法11条が適用可能な場面もないわけではないだろうし、法人税法11条と租税特別措置法66条の6の適用範囲が全く同じわけでもないだろう。両規定の関係については、いくつかの解釈があり得る。ご興味があれば研究されたい。

▷より詳しく学ぶための『参考文献』

  • 最高裁判所判例解説民事篇(平成19年度 下)654頁
  • 判例タイムズ1257号69頁
  • 別冊判例タイムズ25号254頁
  • ジュリスト1362号118頁
  • 租税判例百選〔第5版〕54頁
  • TAINSコード:Z257-10794

(了)

「さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]」は毎月第2週に掲載されます。

連載目次

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第1回~第40回

第41回~

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筆者紹介

  • 菊田 雅裕

    (きくた・まさひろ)

    弁護士
    横浜よつば法律税務事務所

    ・平成13年 東京大学法学部卒業
    ・平成16年 司法試験合格
    ・平成18年 弁護士登録
    ・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
    ・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

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