さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第30回】「張江訴訟」~最判平成17年2月1日(民集59巻2号245頁)~
筆者:菊田 雅裕
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さっと読める!
実務必須の
[重要税務判例]
【第30回】
「張江訴訟」
~最判平成17年2月1日(民集59巻2号245頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
張江訴訟
(最判平成17年2月1日(民集59巻2号245頁))
《概要》
本件当時は、課税売上高が3,000万円以下の事業者は、消費税の免税事業者とされていた。
X社は、ある課税期間(本件課税期間)において、4,225万円を売り上げた。その2年前の年度(本件基準期間)におけるX社の総売上高は3,053万円だったが、本件基準期間において免税事業者であったことを踏まえ、課税売上高は、当該総売上高の103分の100(当時の消費税率は3パーセント)である2,964万円と考えるべきであるとして、本件課税期間について、消費税の申告と納付をしなかった。
これに対し、Y税務署長は、課税売上高は総売上高の103分の100にはならないとして、X社に対し更正決定をした。X社がこれを争ったのが本件である。
最高裁は、課税売上高は総売上高の103分の100にはならないと判断して、X社の主張を退けた。
《関係図》
▷争点
基準期間において消費税の免税事業者であった者について、課税期間において消費税の免税事業者か否か判定する場合であっても、基準期間において免除される消費税相当額(本件においては総売上高の103分の3)を控除して判定すべきか。
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連載目次
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]
第1回~第20回
- 【第1回】 つまみ申告事件(ことさら過少事件)~最判平成6年11月22日(民集48巻7号1379頁)~
- 【第2回】 武富士事件~最判平成23年2月18日(集民236号71頁)~
- 【第3回】 アルゼグループ事件~最判平成18年1月19日(民集60巻1号65頁)~
- 【第4回】 遡及立法事件~最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)~
- 【第5回】 興銀事件~最判平成16年12月24日(民集58巻9号2637頁)~
- 【第6回】 フィルムリース事件~最判平成18年1月24日(民集60巻1号252頁)~
- 【第7回】 ねずみ講事件~最判平成16年7月13日(集民214号751頁)~
- 【第8回】 渡邉林産事件~最判平成16年12月20日(集民215号1005頁)~
- 【第9回】 生命保険年金二重課税事件~最判平成22年7月6日(民集64巻5号1277頁)~
- 【第10回】 確定的な脱税意思による過少申告事件~最判平成7年4月28日(民集49巻4号1193頁)~
- 【第11回】 パチンコ平和事件~最判平成16年7月20日(集民214号1071頁)~
- 【第12回】 アプライド事件~最判平成17年1月25日(民集59巻1号64頁)~
- 【第13回】 未登記新築建物固定資産税等賦課事件~最判平成26年9月25日(民集68巻7号722頁)~
- 【第14回】 ホステス報酬源泉徴収事件~最判平成22年3月2日(民集64巻2号420頁)~
- 【第15回】 弁護士夫婦事件~最判平成16年11月2日(集民215号517頁)~
- 【第16回】 更正処分取消訴訟係属中の相続事件~最判平成22年10月15日(民集64巻7号1764頁)~
- 【第17回】 相互タクシー事件~最判昭和41年6月24日(民集20巻5号1146頁)~
- 【第18回】 エス・ブイ・シー事件~最判平成6年9月16日(刑集48巻6号357頁)~
- 【第19回】 10年退職金事件~最判昭和58年12月6日(集民140号589頁)~
- 【第20回】 共同相続人の連帯納付義務事件~最判昭和55年7月1日(民集34巻4号535頁)~
第21回~
- 【第21回】 サラリーマン・マイカー税金訴訟~最判平成2年3月23日(集民159号339頁)~
- 【第22回】 パチンコ球遊器事件~最判昭和33年3月28日(民集12巻4号624頁)~
- 【第23回】 岩瀬事件~最決平成15年6月13日、東京高判平成11年6月21日(高等裁判所民事判例集52巻26頁)~
- 【第24回】 養老保険事件~最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁)~
- 【第25回】 ペット葬祭業事件~最判平成20年9月12日(集民228号617頁)~
- 【第26回】 意思無能力者の申告義務事件~最判平成18年7月14日(集民220号855頁)~ ★無料公開中★
- 【第27回】 賃料増額請求事件~最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁)~ ★無料公開中★
- 【第28回】 外れ馬券事件~最判平成27年3月10日(刑集69巻2号434頁)~ ★無料公開中★
- 【第29回】 シルバー精工事件~最判平成16年6月24日(集民214号417頁)~
- 【第30回】 張江訴訟~最判平成17年2月1日(民集59巻2号245頁)~
- 【第31回】 大島訴訟/サラリーマン税金訴訟~最判昭和60年3月27日(民集39巻2号247頁)~
- 【第32回】 後発的事由による更正の請求の制度がない場合の不当利得返還請求事件~最判昭和49年3月8日(民集28巻2号186頁)~
- 【第33回】 右山事件~最判平成17年2月1日(集民216号279頁)~
- 【第34回】 NTTドコモ事件~最判平成20年9月16日(民集62巻8号2089頁)~
- 【第35回】 専ら相続税節税の目的でなされた養子縁組事件~最判平成29年1月31日(民集71巻1号48頁)~
- 【第36回】 誤った源泉徴収と確定申告事件~最判平成4年2月18日(民集46巻2号77頁)~
- 【第37回】 大竹貿易事件~最判平成5年11月25日(民集47巻9号5278頁)~
- 【第38回】 制限超過利息事件~最判昭和46年11月9日(民集25巻8号1120頁)~
- 【第39回】 南九州コカ・コーラボトリング事件~最判平成21年7月10日(民集63巻6号1092頁)~
- 【第40回】 虚偽の遺産分割協議の無効確認判決の確定を後発的理由とする更正の請求事件~最判平成15年4月25日(集民209号689頁)~
- 【第41回】 双輝汽船事件~最判平成19年9月28日(民集61巻6号2486頁)~
- 【第42回】 弁護士顧問料事件~最判昭和56年4月24日(民集35巻3号672頁)~
- 【第43回】 遺産分割協議と第二次納税義務事件~最判平成21年12月10日(民集63巻10号2516頁)~
- 【第44回】 サンヨウメリヤス土地賃借事件~最判昭和45年10月23日(民集24巻11号1617頁)~
- 【第45回】 オウブンシャホールディング事件~最判平成18年1月24日(集民219号285頁)~
- 【第46回】 萬有製薬事件~東京高判平成15年9月9日(高等裁判所民事判例集56巻3号1頁)~
- 【第47回】 まからずや事件~最判昭和42年9月19日(民集21巻7号1828頁)~
- 【第48回】 相栄産業事件~最判平成4年10月29日(集民166号525頁)~
- 【第49回】 髙野歯科医師事件~最判平成2年6月5日(民集44巻4号612頁)~
- 【第50回】 日本ガイダント事件~最決平成20年6月5日、東京高判平成19年6月28日(税務訴訟資料257号順号10741)~
- 【第51回】 相続税延滞税事件~最判平成26年12月12日(集民248号165頁)~
- 【第52回】 差押処分と共有者の原告適格事件~最判平成25年7月12日(集民244号43頁)~
- 【第53回】 給与回収のための強制執行と源泉徴収義務事件~最判平成23年3月22日(民集65巻2号735頁)~
筆者紹介
菊田 雅裕
(きくた・まさひろ)
弁護士
横浜よつば法律税務事務所・平成13年 東京大学法学部卒業
・平成16年 司法試験合格
・平成18年 弁護士登録
・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官
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