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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第24回】「養老保険事件」~最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁)~

筆者:菊田 雅裕

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さっと読める!

実務必須の

[重要税務判例]

【第24回】

「養老保険事件」

~最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

養老保険事件

(最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁))

《概要》

今回紹介する判例は、会社(Z社)が、経営者(X)を被保険者とする養老保険契約(被保険者が保険期間内に死亡した場合には死亡保険金が支払われ、保険期間満了まで生存していた場合には満期保険金が支払われる生命保険契約)の契約者となり、保険料を支払ったところ、後日、Xが、満期保険金を受け取った際に、総収入金額から控除できるか否かについて、消極に判断したものである。

所得税法34条2項、当時の所得税法施行令183条2項2号には、控除できる金額が、所得者本人が負担したものに限られるか否か、明確な文言はなく、当時の所得税基本通達34-4は、他人が負担したものも控除できるかのようにも読めたので、争いとなった。

 

《関係図》

▷争点

養老保険の満期保険金に係る一時所得の金額の計算上、法人が支払った保険料の控除が認められるか。

▷判決要旨

養老保険の満期保険金に係る一時所得の金額の計算上、法人が支払った保険料は控除できない。

▷評釈

1 Z社が支払った保険料のうち、2分の1は、Xへの貸付金と経理処理されており、実質的にXが保険料を負担したものとして、控除が認められた。本件で問題となったのは、Z社が損金処理したその余の2分の1についてである。

基本に戻って考えれば、これをXの総収入金額から控除するのはおかしいと考えられるし、Z社での損金処理とXの総収入金額からの控除の両方を認めるのも不合理である。

しかし、通達が、読み方次第では誤解する可能性のある表現であったこと、通常、施行令・通達が法律の内容を具体化していると考えられること、税務行政における通達の影響力などから、下級審は、Xの主張に一定の説得力があるものとし、最高裁と反対の結論を採用したものと思われる。

2 「施行令・通達が法律の内容を具体化している」という見方は間違いではないが、法律の趣旨・目的に立ち戻らず、施行令・通達(特に通達)を盲目的に適用すると、時に見誤ることがある。本件はその好例であろう。

この点、最高裁は、所得税法の規定する所得区分は、個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものであり、同法34条2項もまた、一時所得に係る収入を得た個人の担税力に応じた課税を図る趣旨のものであるなどと指摘して、控除できるのは、所得者本人が負担したものに限られる旨判示した。そして、施行令はこれと整合的に解釈されるべきであり、通達も以上の解釈を妨げないとした。

所得税法34条2項の文言についても、「その収入を得るために支出した金額」という表現からして、収入を得る主体と支出をする主体が同一であることが前提となっていると言及した(「支出された金額」とはなっていない)。

▷判決後の動向等

本件は、事件当時の施行令、通達の範囲で理解することが可能なものであったが、それぞれの規定振りにいささか分かりにくい面もあった。そこで、現在では、意味内容が明確になるようにそれぞれ改正された。

養老保険は、会社から役員個人に資金移動させるスキームの1つとしても用いられている。その契約形態は商品ごとに異なり、課税関係がどのようになるかも、商品ごとに判断する必要がある。もちろん、保険会社から顧客への説明はなされるであろうし、商品化される以上一定の検討は経ているであろうが、相談を受けた際には、上記のような法律の趣旨・目的に立ち戻った検討が必要であろう。

▷より詳しく学ぶための『参考文献』

  • 最高裁判所判例解説民事篇(平成24年度 上)1頁
  • 判例タイムズ1371号118頁
  • 税大論叢66号106頁
  • ジュリスト1441号8頁
  • ジュリスト1446号118頁
  • TAINSコード:Z262-11855

(了)

次回は4月の掲載となります。

連載目次

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]

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筆者紹介

  • 菊田 雅裕

    (きくた・まさひろ)

    弁護士
    横浜よつば法律税務事務所

    ・平成13年 東京大学法学部卒業
    ・平成16年 司法試験合格
    ・平成18年 弁護士登録
    ・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
    ・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

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