〈事例から理解する〉
税法上の不確定概念の具体的な判断基準
【第12回】
「相続税法第32条第1項柱書の更正の請求期限における「事由が生じたことを知った日」とはいつか」
公認会計士・税理士 大橋 誠一
1 大阪国税不服審判所平成29年1月6日裁決(TAINSコード:F0-3-544)
(1) 事実関係の概要
① 被相続人は平成23年8月4日に死亡し(相続人は被相続人の子3名)、相続税の法定申告期限までに相続財産の一部が未分割であったため、これを法定相続分の割合に従って取得したものとして相続税の期限内申告書を提出したところ、未分割財産に含まれる宅地について小規模宅地等の特例の適用を受けるため、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した。
② 請求人の1人は、平成27年2月23日付で、他の請求人らを相手方として遺産分割調停(本件調停)を申し立てた。
③ 請求人らは、平成27年7月30日付で、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、原処分庁はこれを承認した。
④ 請求人らは平成27年10月29日付の遺産分割協議書を作成して、本件調停外で遺産分割(本件遺産分割)したため、請求人の1人は同年11月4日付で本件調停の申立てを取り下げた。
⑤ 請求人らは、平成28年3月4日、本件遺産分割を前提とし、未分割遺産だった宅地に小規模宅地等の特例を適用した上で課税価格を計算したところの更正の請求(本件各更正請求)をした。
⑥ 原処分庁は、本件各更正請求は相続税法第32条に規定する「当該事由が生じたことを知った日(平成27年10月29日)」の翌日から4ヶ月を経過する日(平成28年2月29日)よりも後にされており、期限を徒過したものであるとして、更正すべき理由がない旨の通知処分をした。
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