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実務必須の
[重要税務判例]
【第86回】
「信託財産と滞納処分事件」
~最判平成28年3月29日(集民252号109頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
信託財産と滞納処分事件
最判平成28年3月29日(集民252号109頁)
《概要》
X₂は、平成18年6月、所有する本件土地を、X₁社に信託譲渡した。さらに、X₁社は、同年7月、本件土地上に存在していた本件建物をAから買い受け、本件土地・本件建物をBに賃貸した(本件賃貸借契約)。
その後、X₁社が、本件土地・本件建物、その他のX₁社所有土地に係る各固定資産税を数年にわたって滞納したため、Y市の市長は、平成24年1月、本件賃貸借契約に基づくX₁社のBに対する賃料債権の差押えをした(本件差押え)。なお、本件賃貸借契約においては、賃料につき、本件土地の賃料相当額部分と本件建物の賃料相当額部分の内訳は定められていなかった。
X₁社・X₂は、本件差押えの取消しを求めてY市を提訴したが、最高裁はX₁社・X₂の主張を認めなかった。
《関係図》
※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。
▷争点
信託契約の受託者が、信託財産である不動産とは別の、受託者の固有財産たる不動産に係る固定資産税を滞納した場合に、信託財産である不動産を含む不動産の賃料債権を、滞納処分として差し押さえることは、適法か。
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