開示担当者のための
ベーシック注記事項Q&A
【第1回】
「本連載の狙いと“注記の全体像”」
仰星監査法人
公認会計士 竹本 泰明
◆連載開始にあたって◆
近年、上場会社を中心に有価証券報告書や計算書類の注記が毎年のように改正され、注記の量もさることながら、注記する内容も自由度が高くなってきていることで、開示担当者からは「何を書けばいいの?」「どこまで書けばいいの?」という悲鳴を聞くことが多くなりました。
そもそも注記は、注記する事項は定められているものの、実際に記載する場合の文章や開示内容の詳細さ・明瞭さは企業によって差があるのが実情で、それだけに担当者は困ってしまうことが多い分野といえるでしょう。
そこで、本連載では計算書類の個別注記表(連結計算書類の連結注記表)において開示担当者が作成に困ってしまいそうな注記事項に焦点を当てて、注記事項を解説していきます。
こんな声が聞こえてくる気がします。この連載で計算書類の個別注記表(連結計算書類の連結注記表)に焦点を当てる理由は、主に次の2つです。
➤有価証券報告書に比べて、計算書類の個別注記表は検索しにくく、他社の注記の実例を調べにくい。
➤計算書類の個別注記表について手短にまとめられたサイトが少ない。
連結注記表・個別注記表について手軽に概要を掴めるような情報を提供したい、そんな思いで連載を書いていこうと考えています。
なお、この連載では会計監査人設置会社の開示担当者を読者層として想定し作成していきます。そのため、会計監査人を設置していない会社にとっては”お手軽”な内容になっていないかもしれません。その点、あらかじめご了承ください。
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〇 注記の全体像
今回は第1回目ですので、いきなり各論に入るのではなく、まずは注記の全体像を説明し、第2回目から各論に入っていきたいと思います。
会計監査人設置会社であり、かつ、大会社であって有価証券報告書の提出義務のある会社の2021年4月1日以後開始する事業年度の個別注記表で作成が求められる注記は次のとおりです。
一 継続企業の前提に関する注記
二 重要な会計方針に係る事項に関する注記
三 会計方針の変更に関する注記
四 表示方法の変更に関する注記
四の二 会計上の見積りに関する注記
五 会計上の見積りの変更に関する注記
六 誤謬の訂正に関する注記
七 貸借対照表等に関する注記
八 損益計算書に関する注記
九 株主資本等変動計算書に関する注記
十 税効果会計に関する注記
十一 リースにより使用する固定資産に関する注記
十二 金融商品に関する注記
十三 賃貸等不動産に関する注記
十四 持分法損益等に関する注記
十五 関連当事者との取引に関する注記
十六 一株当たり情報に関する注記
十七 重要な後発事象に関する注記
十八 連結配当規制適用会社に関する注記
十八の二 収益認識に関する注記
十九 その他の注記
(※) 会社計算規則第98条第1項より抜粋。
連結計算書類や連結注記表を作成する場合には、個別注記表における注記を省略できるものも含まれていますが、会計監査人設置会社の場合、概ね上記の注記の作成が必要となります。
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第2回目以降の連載では、上記の注記をテーマにQ&A形式で実際の注記例を紹介しながら、どのように注記を作成すればいいかを説明していきます。
第2回となる次回は、「収益認識に関する注記(収益の分解情報)」をテーマに解説します。
【参考】
- 会社計算規則
(了)
※本稿において意見にわたる部分は、個人の見解であって、所属組織を代表するものではありません。
「開示担当者のためのベーシック注記事項Q&A」は、毎月第4週に掲載されます。