公開日: 2015/02/26 (掲載号:No.108)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第14回】「退職給付引当金(原則法)」

筆者: 西田 友洋

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【STEP1】当期までに帰属する退職給付見込額の算定

従業員に将来支払う退職給付(退職金、退職年金)は、勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生するものであり、賃金の後払いの性格を有する。そのため、退職給付のうち、当期に帰属する部分については、「退職給付費用」として費用計上し、また、「退職給付引当金」として負債に計上する必要がある(企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準(以下、「基準」という)53、54)。年金資産(【STEP3】参照)の運用状況によっては、負債ではなく、前払年金費用として資産に計上する場合もあるが、本解説では、退職給付引当金を前提に解説する。

退職給付引当金及び退職給付費用を算定するにあたって、まず、期末時に退職給付見込額(退職により支給されると見込まれる退職給付の総額)のうち、当期に帰属する部分を算定する必要がある。

なお、これ以降については、従業員非拠出の確定給付企業年金制度で、退職給付債務の計算を年金数理人に依頼している場合を前提として解説する。

(1) 退職給付見込額の期間帰属方法の選択

(2) 期間定額基準による退職給付見込額の算定

(3) 給付算定式基準による退職給付見込額の算定

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(1) 退職給付見込額の期間帰属方法の選択

退職給付見込額のうち、当期に帰属する部分を算定する方法には、期間定額基準と給付算定式基準がある(基準19)。各社は、いずれかの方法を選択する必要がある。なお、期間帰属方法について、連結会社間で、必ずしも統一する必要はない(企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という)77)。

① 期間定額基準
退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法

② 給付算定式基準
退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法

なお、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正を行わなければならない。

 

(2) 期間定額基準による退職給付見込額の算定

期間定額基準では、2つの段階に分けて退職給付見込額を算定する。

① 退職時の退職給付見込額の見積り

退職率、死亡率、予想昇給率等を織り込んで、入社から退職までの全期間における退職給付見込額を見積る(適用指針7~9)。なお、一時的に支払われる早期割増退職金は、勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生した退職給付という性格を有していないため、退職給付見込額の見積りには含めない(適用指針10)。

なお、期末時点において受給権を有していない従業員についても、退職給付見込額の計算の対象となることに留意が必要である(適用指針7)。

② 当期までに帰属する退職給付見込額の算定

の見積額×勤務年数÷退職時の勤務年数」により、当期までに帰属する退職給付見込額を算定する。

実務上、及びは、年金数理人に要求された給与等のデータを渡し、年金数理人に計算してもらう。

 

(3) 給付算定式基準による退職給付見込額の算定

給付算定式基準では、以下の3つの段階に分けて退職給付見込額を算定する。

① 当期までの退職給付見込額の見積り

退職一時金制度の給付算定式に従って、当期までの各勤務期間に帰属する退職給付額を見積る(適用指針7、9)。一時的に支払われる早期割増退職金については、退職給付額の見積りには含めない(適用指針10)。

給付算定式基準では、期間定額基準と異なり、退職時の退職給付見込額を算定せずに、の段階で当期までの期間に帰属する退職給付額を見積るのが特徴である。

なお、期末時点において受給権を有していない従業員についても、退職給付見込額の計算の対象となることに留意が必要である(適用指針12)。

② 当期までに帰属する退職給付見込額の算定

の見積額に退職率、死亡率、予想昇給率等を織り込んで、当期までに帰属する退職給付見込額を見積る(適用指針7、8)。

ここで、会社の退職一時金制度がポイント制やキャッシュ・バランス・プランの場合には、「平均ポイント比例(平均拠出付与額比例)の制度として扱う方法」と「将来のポイントの累計(拠出付与額)を織り込まない方法」がある(退職給付会計に関する数理実務基準・数理実務ガイダンス(以下「ガイダンス」という)5.2.2⑦⑧)。

「平均ポイント比例(平均拠出付与額比例)の制度として扱う方法」の場合、予想昇給率を織り込んで、当期までに帰属する退職給付見込額を見積る。一方、将来のポイントの累計(拠出付与額)を織り込まない方法」の場合、予想昇給率を織り込まないで、当期までに帰属する退職給付見込額を見積る。

実務上、及びは、年金数理人に要求された給与等のデータを渡し、年金数理人に計算してもらう。

③ 著しく高い水準の判断

給付算定式基準による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った退職給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の退職給付が均等に生じるとみなして補正しなければならい(基準19)。

「著しく高い水準」は、基準や適用指針で明らかになっていないため、各社で決定する必要がある。

なお、会社の退職給付制度がポイント制又はキャッシュ・バランス・プランの場合で、「平均ポイント比例(平均拠出付与額比例)の制度として扱う方法」を採用している場合、期間定額基準に近い結果が得られる場合がある。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第14回】

「退職給付引当金(原則法)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、退職給付引当金(原則法)の会計処理について解説する。原則法とは、数理計算により退職給付引当金を算定する方法である。なお、簡便法による退職給付引当金、複数の事業主により設立された確定給付型企業年金制度及び確定拠出制度については、解説していない。

退職給付引当金(原則法)は、個別財務諸表と連結財務諸表で会計処理が異なるため、【STEP1】から【STEP9】で個別財務諸表における会計処理を解説してから、【STEP10】で連結財務諸表における会計処理を解説する。

また、解説の都合上、個別財務諸表における会計処理については、期末での会計処理(【STEP1】から【STEP4】)を解説してから、期中での会計処理(STEP5】から【STEP9】)を解説する。過去勤務費用の算定については、期中で会計処理を行う可能性もあるが、【STEP4】で数理計算上の差異とともに解説している。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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