公開日: 2015/02/26 (掲載号:No.108)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第14回】「退職給付引当金(原則法)」

筆者: 西田 友洋

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【STEP4】数理計算上の差異及び過去勤務費用の算定

数理計算上の差異とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、言い換えると、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。この差異のうち、損益計算書上に費用又は費用のマイナスとして会計処理されていないものを「未認識数理計算上の差異」という(基準11)。

過去勤務費用とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。過去勤務費用のうち、損益計算書上に費用又は費用のマイナスとして会計処理されていないものを「未認識過去勤務費用」という(基準12)。

(1) 数理計算上の差異の算定

(2) 過去勤務費用の算定

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(1) 数理計算上の差異の算定

数理計算上の差異は、年金資産と退職給付債務から生じ、期末に算定する。ただし、未認識数理計算上の差異は、貸借対照表に計上されない。

① 年金資産から生じる数理計算上の差異

年金資産から生じる数理計算上の差異は、期末時に、以下のように算定する。

年金資産から生じる数理計算上の差異

=予定(見積)年金資産(=期首年金資産+当期に拠出した掛金+期待運用収益-当期退職給付支払額)-実際年金資産(期末時の年金資産の時価)

② 退職給付債務から生じる数理計算上の差異

退職給付債務から生じる数理計算上の差異は、期末時に、以下のように算定する。

退職給付債務から生じる数理計算上の差異

=予定(見積)退職給付債務(=期首退職給付債務+勤務費用+利息費用-当期退職給付支払額)-実際退職給付債務(期末時に年金数理人により算定したもらった退職給付債務)

 

(2) 過去勤務費用の算定

過去勤務費用は、退職金規程等の改訂に伴い退職給付水準が変更された結果生じる。したがって、改訂前の退職給付債務と改訂後の退職給付債務の改訂時点における差額により算定する(適用指針41)。ただし、未認識過去勤務費用は、貸借対照表に計上されない。

過去勤務費用は改訂日(労使の合意の結果、規程や規約の変更が決定され周知された日)現在で認識・測定することから(適用指針105)、貸借対照表日時点で算定するとは限らず、改訂日が期中で行われれば、その改訂日時点で算定することになる。

なお、給与水準の変動(ベースアップ)による退職給付債務の変動は、過去勤務費用には該当しない(適用指針41)。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第14回】

「退職給付引当金(原則法)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、退職給付引当金(原則法)の会計処理について解説する。原則法とは、数理計算により退職給付引当金を算定する方法である。なお、簡便法による退職給付引当金、複数の事業主により設立された確定給付型企業年金制度及び確定拠出制度については、解説していない。

退職給付引当金(原則法)は、個別財務諸表と連結財務諸表で会計処理が異なるため、【STEP1】から【STEP9】で個別財務諸表における会計処理を解説してから、【STEP10】で連結財務諸表における会計処理を解説する。

また、解説の都合上、個別財務諸表における会計処理については、期末での会計処理(【STEP1】から【STEP4】)を解説してから、期中での会計処理(STEP5】から【STEP9】)を解説する。過去勤務費用の算定については、期中で会計処理を行う可能性もあるが、【STEP4】で数理計算上の差異とともに解説している。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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