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実務必須の
[重要税務判例]
【第32回】
「後発的事由による更正の請求の制度がない場合の不当利得返還請求事件」
~最判昭和49年3月8日(民集28巻2号186頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
後発的事由による更正の請求の制度がない場合の不当利得返還請求事件
(最判昭和49年3月8日(民集28巻2号186頁))
《概要》
Xは、B・Cに金員を貸し付けていたが、昭和28年分の所得税の確定申告において、この貸付金に対する昭和28年分の利息損害金(ただし未回収)を総所得金額に計上しなかった。そこで、A税務署長は、Xに対し、この点を指摘して更正処分を行い、さらに滞納処分を行った。
その後、Xは、B・Cから貸付金を回収しようとしていたが(なお、Cは死亡しておりCの相続人がCの地位を承継)、B・C所有の不動産に設定を受けていた抵当権につき争いが生じ、Xがこれらの抵当権を失う恐れが強まった。また、Bらには十分な資力もなかった。そこで、Xは、Bらとの間で、Bらに元本債権の存在を認めさせる代わりに、Bらに対する利息損害金を放棄する旨の裁判上の和解をした。
これを受けて、Xは、滞納処分を受けた金員の返還を求めて、Y(国)に対し、不当利得返還請求訴訟を提起した(当時、後発的事由による更正の請求は法定されていなかった)。最高裁は、Xによる不当利得返還請求を認めた。
《関係図》
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