公開日: 2026/06/25 (掲載号:No.674)
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谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第58回】「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」-土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基本判例

【第58回】

「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」

-土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回は、判例法理としての「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説では増加益清算課税説)の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷のうち、後者に係る譲渡所得の金額の計算上総収入金額から控除される取得費(所税33条3項・38条)の概念を借入金利子の取得費算入の可否問題に関して検討したが、今回は、同じく総収入金額から控除される「資産の譲渡に要した費用」(同33条3項。以下「譲渡費用」という)の概念及び範囲を土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁(以下「平成18年最判」という)に即して検討する。

その検討について結論を先取りして概略を述べておくと、第55回から前回まで3回にわたって、「譲渡所得課税の趣旨」法理を基軸とする譲渡所得課税問題の司法的解決を検討してきたが、今回は、平成18年最判を、同法理から(実質的に)「離脱」する判断を示したものとみて、その判断を一種の純所得課税の考え方ともいうべき譲渡益課税説前回Ⅲ1参照)に基づくものとして位置づけた上で、その判断のための一般的基準の適用に当たってその「離脱」の帰結として譲渡費用概念を拡大したものと結論づけた。以下では、まず、平成18年最判の判断内容・構造からみておくことにしよう。

 

Ⅱ 平成18年最判の判断内容・構造

本件で譲渡費用該当性が争われたのは、新潟県内の三条土地改良区の組合員が同土地改良区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項及び同土地改良区地区除外等処理規程に基づき支払った決済金(以下「本件決済金」という)並びに同土地改良区施設等使用規程及び施設等使用負担金徴収規程に基づき施設等使用負担金として徴収され支払った協力金等(以下「本件協力金等」という)であった。

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税法基本判例

【第58回】

「「譲渡所得課税の趣旨」法理からの「離脱」とその帰結及び射程」

-土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁による譲渡費用概念の拡大-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

前回は、判例法理としての「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説では増加益清算課税説)の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷のうち、後者に係る譲渡所得の金額の計算上総収入金額から控除される取得費(所税33条3項・38条)の概念を借入金利子の取得費算入の可否問題に関して検討したが、今回は、同じく総収入金額から控除される「資産の譲渡に要した費用」(同33条3項。以下「譲渡費用」という)の概念及び範囲を土地改良区農地転用譲渡事件・最判平成18年4月20日訟月53巻9号2692頁(以下「平成18年最判」という)に即して検討する。

その検討について結論を先取りして概略を述べておくと、第55回から前回まで3回にわたって、「譲渡所得課税の趣旨」法理を基軸とする譲渡所得課税問題の司法的解決を検討してきたが、今回は、平成18年最判を、同法理から(実質的に)「離脱」する判断を示したものとみて、その判断を一種の純所得課税の考え方ともいうべき譲渡益課税説前回Ⅲ1参照)に基づくものとして位置づけた上で、その判断のための一般的基準の適用に当たってその「離脱」の帰結として譲渡費用概念を拡大したものと結論づけた。以下では、まず、平成18年最判の判断内容・構造からみておくことにしよう。

 

Ⅱ 平成18年最判の判断内容・構造

本件で譲渡費用該当性が争われたのは、新潟県内の三条土地改良区の組合員が同土地改良区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項及び同土地改良区地区除外等処理規程に基づき支払った決済金(以下「本件決済金」という)並びに同土地改良区施設等使用規程及び施設等使用負担金徴収規程に基づき施設等使用負担金として徴収され支払った協力金等(以下「本件協力金等」という)であった。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」

第1回~第20回

第21回~

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同センター理事・同センター「日税研究賞」選考委員・同センター編集委員会委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社・2023年)、『基礎から学べる租税法〔第4版〕』(共著・弘文堂・2025年)、『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)、『税法基本判例Ⅱ』(清文社・2025年)など。
 
   

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