谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第57回】
「「譲渡所得課税の趣旨」法理の「牽引力」の減退と復活・遮断(「どんでん返し」)」
-借入金利子取得費控除[三輪田]事件・最判平成4年7月14日民集46巻5号492頁への「遠い道程」-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
1 借入金利子の取得費算入の可否問題
前々回、前回と2回にわたって「譲渡所得課税の趣旨」法理(最判昭和43年10月31日訟月14巻12号1442頁、最判昭和47年12月26日民集26巻10号2083頁、最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁等。学説では増加益清算課税説)を取り上げ、同法理の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷との「競い合い」(「趣旨内競い合い」)の観点から、譲渡所得課税に関する判例を検討してきたが、その際には、譲渡所得の本質ないし譲渡所得課税の本質に着目して、譲渡所得課税❶の「先行」あるいは場合によっては「独走」を問題にしてきた。
これに対して、今回は、譲渡所得課税❷の側から、そのために行われる譲渡所得の金額の計算において総収入金額から控除される取得費(所税33条3項・38条)の概念に着目して、その意義をめぐる判例として借入金利子取得費控除[三輪田]事件・最判平成4年7月14日民集46巻5号492頁(以下「平成4年7月最判」という)を取り上げ、譲渡所得の基因となる資産の取得のための借入金に係る利子を取得費に算入し譲渡所得の金額の計算上総収入金額から控除することを認めるか否かの問題(以下「借入金利子の取得費算入の可否問題」という)を検討する。
借入金利子の取得費算入の可否が問題とされるようになった社会経済的背景については次のように述べられている(岩﨑政明「判批」月刊税務事例19巻12号(1987年)4頁、5-6頁)。
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