公開日: 2025/12/04 (掲載号:No.647)
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租税争訟レポート 【第82回】「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第82回】

「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」
(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、
控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【判決の概要】

〈第1審判決の概要〉

仙台地方裁判所令和5年12月25日判決
仙台地方裁判所令和3年(行ウ)
第6号更正処分取消請求事件
TAINSコード:Z273-13917

[原告]

建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社

[被告]


処分行政庁:仙台北税務署長事務承継者仙台中税務署長

[争点]

(1) 本件外注費水増し分をAのBへの外注費に基づいて算定することの当否及び本件外注費水増し分の金額

(2) 本件外注費水増し分の「損金」及び「課税仕入れ」該当性

(3) 益金に算入すべき損害賠償請求権の発生及びその益金への算入時期

(4) 重加算税賦課要件該当性

(5) 国税通則法70条4項該当性

[判決]

一部認容(国側控訴)

〈控訴審判決の概要〉

仙台高等裁判所令和6年6月4日判決
仙台高等裁判所令和6年(行コ)
第3号更正処分取消請求控訴事件
TAINSコード:Z888-2741

[控訴人]


処分行政庁:仙台北税務署長事務承継者仙台中税務署長

[被控訴人]

建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社

[争点]

重加算税の賦課要件該当性

[判決]

原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す
(上告受理申立て)

 

【事案の概要】

原告は、昭和27年10月27日、電気工事、照明工事、機械設備工事、プラント工事、土木工事、建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社である。

原告は、土木工事業を営む訴外株式会社A(以下「A社」という)に対する土木工事の外注費について、平成24年9月期から平成29年9月期までの事業年度(本件各事業年度)の法人税、復興特別法人税及び地方法人税の計算上、これを損金の額に算入するとともに、平成24年9月課税期間から平成29年9月課税期間(本件各課税期間)までの消費税及び地方消費税の計算上、仕入税額控除を適用して申告した。

これに対し、仙台北税務署長は、申告されたA社に対する外注費の一部は、原告の従業員であった甲、乙、丙及び丁、並びにA社の代表取締役である戊らが行った工事代金の水増し請求によるものであり(以下、この水増し請求に係る甲らの行為を「本件不正行為」という)、当該外注費のうち水増し金額分(本件外注費水増し分)は、役務の提供を受けた対価であるとは認められないから、これを損金に算入することも、仕入税額控除を適用することもできず、法人税の計算上、本件不正行為により生じた損失は、本件各事業年度の損金に算入され、当該損失に対応する損害賠償請求権は、当該損失が生じた事業年度の益金に算入されることになるなどとして、下記の処分(本件各更正処分等)を行った。

本件は、原告が、本件各更正処分等を不服としてその全部の取消しを求める事案である。

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【第82回】

「重加算税「取締役及び従業員による不正と重加算税賦課決定処分」
(第1審:仙台地方裁判所令和5年12月25日判決、
控訴審:仙台高等裁判所令和6年6月4日判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【判決の概要】

〈第1審判決の概要〉

仙台地方裁判所令和5年12月25日判決
仙台地方裁判所令和3年(行ウ)
第6号更正処分取消請求事件
TAINSコード:Z273-13917

[原告]

建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社

[被告]


処分行政庁:仙台北税務署長事務承継者仙台中税務署長

[争点]

(1) 本件外注費水増し分をAのBへの外注費に基づいて算定することの当否及び本件外注費水増し分の金額

(2) 本件外注費水増し分の「損金」及び「課税仕入れ」該当性

(3) 益金に算入すべき損害賠償請求権の発生及びその益金への算入時期

(4) 重加算税賦課要件該当性

(5) 国税通則法70条4項該当性

[判決]

一部認容(国側控訴)

〈控訴審判決の概要〉

仙台高等裁判所令和6年6月4日判決
仙台高等裁判所令和6年(行コ)
第3号更正処分取消請求控訴事件
TAINSコード:Z888-2741

[控訴人]


処分行政庁:仙台北税務署長事務承継者仙台中税務署長

[被控訴人]

建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社

[争点]

重加算税の賦課要件該当性

[判決]

原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す
(上告受理申立て)

 

【事案の概要】

原告は、昭和27年10月27日、電気工事、照明工事、機械設備工事、プラント工事、土木工事、建築工事等の設計、施工及び保守、管理等を目的として設立された資本金1億円の株式会社である。

原告は、土木工事業を営む訴外株式会社A(以下「A社」という)に対する土木工事の外注費について、平成24年9月期から平成29年9月期までの事業年度(本件各事業年度)の法人税、復興特別法人税及び地方法人税の計算上、これを損金の額に算入するとともに、平成24年9月課税期間から平成29年9月課税期間(本件各課税期間)までの消費税及び地方消費税の計算上、仕入税額控除を適用して申告した。

これに対し、仙台北税務署長は、申告されたA社に対する外注費の一部は、原告の従業員であった甲、乙、丙及び丁、並びにA社の代表取締役である戊らが行った工事代金の水増し請求によるものであり(以下、この水増し請求に係る甲らの行為を「本件不正行為」という)、当該外注費のうち水増し金額分(本件外注費水増し分)は、役務の提供を受けた対価であるとは認められないから、これを損金に算入することも、仕入税額控除を適用することもできず、法人税の計算上、本件不正行為により生じた損失は、本件各事業年度の損金に算入され、当該損失に対応する損害賠償請求権は、当該損失が生じた事業年度の益金に算入されることになるなどとして、下記の処分(本件各更正処分等)を行った。

本件は、原告が、本件各更正処分等を不服としてその全部の取消しを求める事案である。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第60回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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