公開日: 2015/04/02 (掲載号:No.113)
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租税争訟レポート 【第22回】「的中馬券に対する課税(最高裁判決)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第22回】

「的中馬券に対する課税(最高裁判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

最高裁判所平成27年3月10日判決
原審:大阪高等裁判所平成26年5月9日判決
第1審:大阪地方裁判所平成25年5月23日判決

[被告人]
元会社員の男性

[公訴事実]

以下のとおり、課税所得が存在するにもかかわらず、所得税確定申告書を提出しなかったこと

《平成19年分》
総所得金額3億7,420万132円、所得税額1億4,562万9,100円

《平成20年分》
総所得金額6億9,694万8,779円、所得税額2億7,488万1,500円

《平成21年分》
総所得金額3億8,836万3,205円、所得税額1億5,123万500円

[罰則規定(所得税法241条)]

正当な理由がなくて第120条第1項(確定所得申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかった者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

[上告受理理由]
検察官は、本件には、当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得に当たるか雑所得に当たるか、外れ馬券の購入代金が所得税法上の必要経費に当たるか否かという法令の解釈に関する重要な事項が含まれていると主張して事件受理の申立てをし、当審は受理決定をした。

[判決]

上告棄却。

(第1審判決)懲役2月、執行猶予1年

1 払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得とした原判断は正当である。

2 外れ馬券の購入代金について馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとした原判断は正当である。

[求刑]

懲役1年

 

【事案の概要】

被告人の元会社員は、3年間で28億7,000万円分の馬券を購入し、30億円余りの的中配当を得たが、競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7,000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪で大阪地検に告発され、起訴された。

第1審の大阪地方裁判所は、被告人の勝ち馬投票券の払戻しによる所得は雑所得であると認定し、外れ馬券の購入費用等を必要経費として認めて、所得税額を約5,200万円と認定し、執行猶予付きの判決を言い渡した。

これを不服とする検察は控訴したが、控訴が棄却されたことから、上告受理申立てを行ったものである。

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【第22回】

「的中馬券に対する課税(最高裁判決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

最高裁判所平成27年3月10日判決
原審:大阪高等裁判所平成26年5月9日判決
第1審:大阪地方裁判所平成25年5月23日判決

[被告人]
元会社員の男性

[公訴事実]

以下のとおり、課税所得が存在するにもかかわらず、所得税確定申告書を提出しなかったこと

《平成19年分》
総所得金額3億7,420万132円、所得税額1億4,562万9,100円

《平成20年分》
総所得金額6億9,694万8,779円、所得税額2億7,488万1,500円

《平成21年分》
総所得金額3億8,836万3,205円、所得税額1億5,123万500円

[罰則規定(所得税法241条)]

正当な理由がなくて第120条第1項(確定所得申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかった者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

[上告受理理由]
検察官は、本件には、当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得に当たるか雑所得に当たるか、外れ馬券の購入代金が所得税法上の必要経費に当たるか否かという法令の解釈に関する重要な事項が含まれていると主張して事件受理の申立てをし、当審は受理決定をした。

[判決]

上告棄却。

(第1審判決)懲役2月、執行猶予1年

1 払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得とした原判断は正当である。

2 外れ馬券の購入代金について馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとした原判断は正当である。

[求刑]

懲役1年

 

【事案の概要】

被告人の元会社員は、3年間で28億7,000万円分の馬券を購入し、30億円余りの的中配当を得たが、競馬の払戻金を一切申告せず、約5億7,000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪で大阪地検に告発され、起訴された。

第1審の大阪地方裁判所は、被告人の勝ち馬投票券の払戻しによる所得は雑所得であると認定し、外れ馬券の購入費用等を必要経費として認めて、所得税額を約5,200万円と認定し、執行猶予付きの判決を言い渡した。

これを不服とする検察は控訴したが、控訴が棄却されたことから、上告受理申立てを行ったものである。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第30回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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