租税争訟レポート
【第25回】
「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の
必要経費該当性(東京地方裁判所判決)」
〈後編〉
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
前回に引き続き、本稿では、最高裁判決平成27年3月10日と異なる見解を示して、馬券の的中による払戻金に係る所得を一時所得、総収入から控除する金額を的中した馬券に係る購入金額とすることが相当であるとして課税庁側勝訴の判決を言い渡した東京地方裁判所平成27年5月14日判決について、最高裁判決との相違点を解説したうえで、5月29日、パブリック・コメントを経て改正された所得税基本通達34-1について、パブリック・コメントで寄せられた意見とこれに対する国税庁の考え方などを引用しながら、検討したい。
【事案の概要(再掲)】
本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
【解説-最高裁判決との比較検討】
1 類似事件における別件当事者との相違点
原告は、馬券の購入にあたって、ソフトウェアを利用せず、レースごとに独自の分析を行っていたこと、馬券の購入実績、的中か外れかといった履歴が残っておらず、競馬用の預金口座の入出金実績から、購入金額、的中による払戻金額を推定することにより課税が行われたことの2点が、原告と別件当事者との大きな相違点であった。
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