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実務必須の
[重要税務判例]
【第28回】
「外れ馬券事件」
~最判平成27年3月10日(刑集69巻2号434頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
外れ馬券事件
(最判平成27年3月10日(刑集69巻2号434頁))
《概要》
Xは、馬券を自動で購入できるソフトを利用して、継続的に馬券を購入し、当たり馬券の払戻金を得ることによって、多額の利益を得ていた。しかし、Xは、これについて所得税の確定申告をしなかった。
そこで、Y検察官は、当たり馬券の払戻金は一時所得に該当し、当たり馬券の購入代金のみを費用として控除できるという前提に立ち、総所得金額を14億6,000万円、所得税額を5億7,000万円とした上、正当な理由なく所得税の確定申告をしなかったとして、Xを起訴した。
これに対し、Xが、Y検察官主張の総所得金額は誤っているし、確定申告をしなかったことに正当な理由があったとして争ったのが本件である。
最高裁は、総所得金額の計算について、Y検察官の主張が誤っていることを認めた。
《関係図》
▷争点
1 Xが得た当たり馬券の払戻金による利益は、一時所得に該当するか、雑所得に該当するか。
2 Xが得た当たり馬券の払戻金による利益が雑所得に該当するとして、外れ馬券の購入代金も必要経費として控除することができるか。
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