公開日: 2018/12/13 (掲載号:No.298)
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租税争訟レポート 【第40回】「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第40回】

「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは

(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

所得税法第204条第1項には、「源泉徴収義務」について、以下のような規定がある。

第204条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。

(中略)

6 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金

(以下略)

そして、ホステス等に支払う報酬・料金については、国税庁タックアンサーNo.2807に以下のとおり、詳細な解説がされている。

No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金

ホステス等に報酬・料金を支払うときは、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

ただし、その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。

1 源泉徴収の範囲

ホステス等に支払う報酬・料金とは、次に該当する場合をいいます。

(1) バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合

(2) いわゆるバンケットホステス・コンパニオン等をホテル、旅館その他飲食をする場所に派遣して接待等の役務の提供を行わせることを内容とする事業を営む者が、そのバンケットホステス、コンパニオン等に報酬・料金を支払う場合

(注) このバンケットホステス・コンパニオン等とは、ホテル、旅館、飲食店その他飲食をする場所で行われるパーティー等の飲食を伴う会合において、専ら客の接待等の役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

2 源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるもの

(1) 報奨金や衣装代

(2) 深夜帰宅するためのタクシー代

(以下略)

ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払時に源泉所得税を控除することが義務付けられ、ホステス等は、支払いを受けた「報酬・料金」については、事業所得として確定申告を行うことが、所得税の規定からは予定されていたはずである。

そして、ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払いを行う事業者の消費税額等の計算上、課税仕入れに該当することから、これを仕入税額控除の対象として消費税額等の確定申告を行うものという理解が成り立ってきたものと考える。

ところが、最近公表された裁決事例や判決では、上記タックスアンサー冒頭のただし書きの条項「その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します」を適用して、ホステス等に支払う「報酬・料金」を給与所得と認定することにより、消費税額等の計算においても課税仕入れであることを認めず、納税告知処分や消費税額等の賦課決定処分を行った原処分庁の判断を認め、納税者の主張を退けるものが散見される。

本稿では、去る9月27日に公表された裁決事例のうちから、キャバクラを経営する審査請求人がキャストに支払った金銭が給与であると判断された裁決と、同じく、自ら経営するキャバクラのホステスに支払った金銭が、給与であるとして納税告知処分を受けた原告(控訴人、上告人)の訴えを裁判所が棄却した判決を検討することにより、所得税法第204条1項6号に規定する「ホステス等」の意義を考えてみたい。

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【第40回】

「所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは

(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

所得税法第204条第1項には、「源泉徴収義務」について、以下のような規定がある。

第204条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。

(中略)

6 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金

(以下略)

そして、ホステス等に支払う報酬・料金については、国税庁タックアンサーNo.2807に以下のとおり、詳細な解説がされている。

No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金

ホステス等に報酬・料金を支払うときは、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

ただし、その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。

1 源泉徴収の範囲

ホステス等に支払う報酬・料金とは、次に該当する場合をいいます。

(1) バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払う場合

(2) いわゆるバンケットホステス・コンパニオン等をホテル、旅館その他飲食をする場所に派遣して接待等の役務の提供を行わせることを内容とする事業を営む者が、そのバンケットホステス、コンパニオン等に報酬・料金を支払う場合

(注) このバンケットホステス・コンパニオン等とは、ホテル、旅館、飲食店その他飲食をする場所で行われるパーティー等の飲食を伴う会合において、専ら客の接待等の役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

2 源泉徴収の対象となる報酬・料金に含まれるもの

(1) 報奨金や衣装代

(2) 深夜帰宅するためのタクシー代

(以下略)

ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払時に源泉所得税を控除することが義務付けられ、ホステス等は、支払いを受けた「報酬・料金」については、事業所得として確定申告を行うことが、所得税の規定からは予定されていたはずである。

そして、ホステス等に支払う「報酬・料金」については、支払いを行う事業者の消費税額等の計算上、課税仕入れに該当することから、これを仕入税額控除の対象として消費税額等の確定申告を行うものという理解が成り立ってきたものと考える。

ところが、最近公表された裁決事例や判決では、上記タックスアンサー冒頭のただし書きの条項「その内容が給与等に該当する場合には、給与等として源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します」を適用して、ホステス等に支払う「報酬・料金」を給与所得と認定することにより、消費税額等の計算においても課税仕入れであることを認めず、納税告知処分や消費税額等の賦課決定処分を行った原処分庁の判断を認め、納税者の主張を退けるものが散見される。

本稿では、去る9月27日に公表された裁決事例のうちから、キャバクラを経営する審査請求人がキャストに支払った金銭が給与であると判断された裁決と、同じく、自ら経営するキャバクラのホステスに支払った金銭が、給与であるとして納税告知処分を受けた原告(控訴人、上告人)の訴えを裁判所が棄却した判決を検討することにより、所得税法第204条1項6号に規定する「ホステス等」の意義を考えてみたい。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第60回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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