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実務必須の
[重要税務判例]
【第57回】
「借入金利子事件」
~最判平成4年7月14日(民集46巻5号492頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
借入金利子事件
最判平成4年7月14日(民集46巻5号492頁)
《概要》
Xは、Aから、自己の居住用として本件土地建物を購入し、B銀行から資金を借り入れて、購入代金3,000万円を支払った。資金の借入から51日後に、Xは、本件土地建物を自己の居住の用に供した。Xは、数年の間、B銀行に借入金の分割返済を行い、併せて当該借入金についての利子の支払も行った。
その後、Xは、Cに対し、本件土地建物を売却した。その際の譲渡益につき、所得税の確定申告において、B銀行に支払った借入金利子の全額を取得費に算入した。これに対し、Y税務署長は、取得費に算入できるのは、資金の借入から本件土地建物を自己の居住の用に供するまでの51日間に対応する利子38万円のみであるとして、Xに対し、更正処分をした。そこで、Xが更正処分の取消しを求めて提訴したのが本件である。
最高裁は、結論として、更正処分は適法とし、Xの主張を認めなかった。
《関係図》
▷争点
個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、当該不動産の取得のために借入をした場合における借入金の利子のうち、所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる範囲。
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