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実務必須の
[重要税務判例]
【第70回】
「課税処分と信義則事件」
~最判昭和62年10月30日(集民152号93頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
課税処分と信義則事件
最判昭和62年10月30日(集民152号93頁)
《概要》
Xの実兄・養父であるAは、戦前より、B商店の屋号で、酒類販売業を営んできた。なお、B商店での事業所得については、Aにおいて青色申告の承認を受けていた。
アルコール依存症により、AがB商店の経営をすることは困難となったため、Xは、昭和25年頃からB商店の営業に従事し、昭和29年頃からはXが中心となってB商店の運営を行うようになった。B商店の事業所得については、従前どおり、A名義で青色申告を行っていた。しかし、昭和46年分以降については、Xは、X名義で青色申告を行うようになった(なお、Xにおいては、青色申告の承認なし)。
Aは昭和47年9月に死亡し、Xがこれを相続した。Xは、その後も、青色申告の承認なく、B商店の事業所得について、X名義で青色申告を行った。
これを受けて、Y税務署長は、Xに対し、昭和48・49年分の所得税について、白色申告とみなして更正処分をした。
Xは、一連の経過からして当該処分は信義則に反するとして、当該処分の取消訴訟を提起した。一・二審はXの主張を認めたが、最高裁は、二審の判断方法に誤りがあるとして二審の判決を破棄し、本件を二審に差し戻した。
《関係図》
▷争点
課税処分の取消事由として、信義則違反の主張が認められるか。また、これが認められるのはどのような場合か。
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