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実務必須の
[重要税務判例]
【第16回】
「更正処分取消訴訟係属中の相続事件」
~最判平成22年10月15日(民集64巻7号1764頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
更正処分取消訴訟係属中の相続事件
(最判平成22年10月15日(民集64巻7号1764頁))
《概要》
今回紹介する事例の概要は、以下のとおりである。
Zが、Y税務署長から所得税の更正処分を受けたので、Y税務署長指摘の不足額をいったん納付した上、所得税の更正処分について訴訟(別件訴訟)で争っていたところ、別件訴訟係属中にZが死亡し、相続人XがZを相続して別件訴訟も承継した。Xは、別件訴訟係属中に、Zの相続にかかる相続税の申告もした。なお、その際、下記の過納金の還付請求権は、Zの相続財産に含めなかった。
別件訴訟はXの勝訴に終わり、これを受けて、Y税務署長は、Xに対し、Zがいったん納付していた所得税の不足額を過納金として還付した。Xがこの過納金を一時所得として所得税の確定申告をしたところ、Y税務署長は、過納金の還付請求権はZの相続財産であったとして、相続税の更正処分をした。そこで、この更正処分の取消しを求めてXが提訴したというのが、本件である。
最高裁は、過納金の還付請求権はZの相続財産であったとして、Xの主張を認めなかった。
《関係図》
▷争点
上記過納金の還付請求権は、被相続人の相続財産を構成するか。
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