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実務必須の
[重要税務判例]
【第94回】
「農地売主相続事件」
~最判昭和61年12月5日(訟務月報33巻8号2149頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
農地売主相続事件
最判昭和61年12月5日(訟務月報33巻8号2149頁)
《概要》
Aは、Bに対し、所有する農地を4,500万円で売却した。この売買契約においては、契約と同日に手付金600万円、2ヶ月後に内金1,000万円、4ヶ月後に残代金を支払うこととされ、また、残代金の支払と同時に所有権移転の登記申請と農地の引渡しが行われることとされた。
Bは、内金の支払後、農地をC社に転売した。そして、AとC社は、農業委員会に対し、当該農地について転用の届出を行い、これは2週間ほどで受理された。なお、届出後、C社は、当該土地に建物を建てるべく、建築確認申請を行った。
ところが、その後Aが急死したため、契約の履行が遅れ、予定日より15日遅れて残代金が支払われ、その翌日、所有権移転登記が行われた。
このように所有権移転がAの死後であったことから、Aの相続人Xは、相続開始時点では所有権は移転しておらず、農地が相続財産であるとして相続税の申告を行った(当時の評価通達に基づく路線価により、農地を2,000万円と評価して相続税額を計算)。
Y税務署長は、農地の所有権は農地法による届出が受理され効力が生じた日にC社に移転したものであって、そうであれば、農地ではなく売買(残)代金債権(2,900万円)が相続財産に含まれることになるとして、Xに対し更正処分を行った。そこで、Xは、その取消しを求めて提訴した。
最高裁は、Xの主張を認めなかった。
《関係図》
▷争点
農地の売買契約の締結後、所有権の移転前に、売主が死亡した場合において、売主の相続財産に含まれることとなるのは、農地か、売買(残)代金債権か。
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