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実務必須の
[重要税務判例]
【第78回】
「デンソー事件」
~最判平成29年10月24日(民集71巻8号1522頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
デンソー事件
最判平成29年10月24日(民集71巻8号1522頁)
《概要》
内国法人X社は、ASEAN地域でのグループ会社の事業の統括をさせるため、シンガポールにおいてA社(X社の100%子会社)を設立した。A社は、ASEAN地域の統括業務を行ってグループ会社から対価を得ていた。また、当該グループ会社の株式を保有して持株に関する業務を行い、他方、配当収入を得ていた。
X社は、平成19年4月1日から平成20年3月31日まで及び同年4月1日から平成21年3月31日までの各事業年度について、A社の主たる事業はASEAN地域の子会社の統括業務であり、タックス・ヘイブン対策税制(租税特別措置法(当時のもの、以下同じ)66条の6第1項)が適用されないものとして(同条第3項・第4項の適用除外要件に該当するものとして)法人税の確定申告を行った。
これに対し、所轄税務署長は、A社の主たる事業はASEAN地域の子会社の株式の保有であり、適用除外要件には該当せず、タックス・ヘイブン対策税制の適用があるものとして、法人税の更正処分を行った。そこで、X社は、当該処分の取消を求めて、Y(国)を提訴した。
最高裁は、Xの主張を認めた。
《関係図》
▷争点
1 A社の行う地域統括業務は、租税特別措置法66条の6第3項にいう株式の保有に係る事業に含まれるか。
2 当該事業年度において、A社の、租税特別措置法66条の6第3項・第4項にいう主たる事業は、地域統括業務か、株式の保有か。
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