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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント
〔労務面のアドバイス〕
【第2回】
「災害時の特例措置」
特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵
災害が発生した場合、企業は、市区町村や厚生労働省等の公的機関が公表する災害への対応や特例措置について、報道やホームページ等で確認しなければならない。企業及び社員に必要な情報を収集・提供し、企業として対応可能な手続を速やかに行うことが必要である。
なお、災害の種類や規模、発生地域等によって、講じられる特例措置等の内容は様々である。下記で紹介するものがすべての場合において適用されるわけでないため、やはりその都度、確認することが必要となる。
災害時に講じられる主な労働保険・社会保険手続、各種助成金は次のとおり。
① 怪我をしたり病気にかかった場合の保険や給付金の請求手続(労働者災害補償保険や健康保険の手続)
- 災害により仕事中に怪我をしたり、通勤途上で災害が発生し怪我をしたときは、労働者災害補償保険の給付対象となる。ただし、上記以外の場合や、休暇中などの怪我については、健康保険からの給付となる。
- 災害時の労災請求については、事業主や医療機関の証明がなくても、受付可能な場合がある。
② 各種助成金の発令(東日本大震災で事例あり)
- 雇用調整助成金(震災等で工場が稼働しないなど一時的に休業を行った場合に、休業手当相当額の一部を助成する)
- 被災者雇用開発助成金(ハローワーク等の紹介により、被災離職者を雇用した場合、賃金の一部に相当する額が支給される)
③ 倒産等による未払賃金の立替払制度
- 災害で被害を受けたことにより、倒産状態に至った場合、国が企業に代わって、未払い賃金の一部を立替払いする。
「倒産等による未払賃金の立替払制度について、申請手続きの簡略化を行っています」
④ 労働保険料の免除、納付の延長
- 東日本大震災では、労働保険料等の免除、保険料の納期限の延長、納付の猶予等の特例措置が講じられた。
⑤ 保険証なしで医療機関を受診でき、窓口での一部負担金の猶予・免除制度
⑥ 雇用保険失業給付の給付制限期間の短縮特例措置
- 自己都合退職等により、給付制限を受けている(受ける)場合は、給付開始時期が早まる。
⑦ 災害により、一時的に離職した場合、雇用保険の失業給付を受給できる特例措置
「休業や一時離職する場合の給付金のお知らせ」
⑧ 災害により、雇用保険の失業認定日にハローワークに行くことができない場合は失業認定日の変更が、交通の途絶や遠隔地への避難などにより居住地管轄のハローワークに行くことが困難な場合は、その他のハローワークで失業給付の手続をすることができる。
「平成28年熊本地震等に伴う雇用保険失業給付の特例措置について」
⑨ 厚生年金保険、健康保険の保険料納付の延長
- 東日本大震災では、被害を受けた地域に所在地がある事業所に対する厚生年金保険、船員保険、健康保険、子供手当に係る拠出金等の保険料の納期限が延長された。
- 住宅、家財、その他の財産について概ね1/2以上の損害を受けた被保険者は、本人の申請に基づき国民年金保険料が全額免除された。
参考に、東日本大震災及び熊本地震における施策がまとめられた厚生労働省のホームページを紹介しておく。
◆東日本大震災関連情報(厚生労働省)
◆熊本地震震災関連情報(厚生労働省)
(了)
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