公開日: 2016/09/29 (掲載号:No.187)
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被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔労務面のアドバイス〕 【第3回】「日頃の防災対策で被害の軽減を」

筆者: 小宮山 敏恵

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被災したクライアント企業への

実務支援のポイント

〔労務面のアドバイス〕

【第3回】

「日頃の防災対策で被害の軽減を」

 

特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵

 

災害を避けることはできないが、災害から被る被害は、対処の仕方によって軽減することはできる。過去に起きた震災の教訓を生かし、企業が一丸となって、日頃から防災対策に取り組んでいただきたい。

緊急時において、人の思考力・判断力は平常時に比べて格段に低下する。そのため、事前の対策・準備は重要である。

『防災意識の高い企業が、万一の時、経営を守る』ということを理解しておきたい。

(1) 「防災マニュアル」の作成・整備

企業の防災マニュアルは、天災等が起こった時を想定し、見やすく、わかりやすく、使いやすいものを作成するとともに、適宜見直しを行うことで、常時役立つものにしておくことが必要である。

主に下記の点について記載する必要がある。

 災害時の組織体制の決定

組織は通常の経営組織と異なり、企業のトップが意思決定をし、組織的に役割分担を決め、担当者を配置する。

 緊急連絡網の作成、災害伝言ダイヤル、災害掲示板等の作成

緊急事態が発生した場合は、情報伝達が非常に重要である。デマや不確実な情報が氾濫して混乱が起こる可能性がある。正確な情報を迅速に収集し、社内に伝達していくことで、パニックを防止することができる。

 情報収集と提供の仕方

緊急時の情報を収集し、迅速に伝える方法を整備しておく。
  • 社員の安否・建物・設備・物品の被害状況・関係企業・取引先の被害状況等
  • 自社内の支店・営業所、取引先、消防、警察、市区町村役場、交通機関、近隣医療機関、ガス、水道、電気等の連絡先も一覧表にして記載する。

 

その他、東京都が作成した「東京防災」を参考にされたい。

【参考】 東京都ホームページ
「東京防災」の作成について

(2) 防災グッズ・防災備蓄品の保管・定期点検

  • 防災グッズ(ヘルメットや懐中電灯等、避難リュックサック)、防災備蓄品(食料・生活用品・その他非常用備品)について、常時保管し、定期的に点検する。
  • 品名・数量・保管場所・責任者等がわかるよう、チェックリストを作成しておく。
  • 特に、防災備蓄品等の保存状態、食品の消費期限等には十分注意し、定期的に点検し、整備する。

(3) 職場内における落下物・転倒物の防止対策を実施する。

(4) 危険物や消火用設備等の安全確認を行う。

(5) 非常口や避難経路の点検を行う。

(6) 重要データのバックアップ対策、非常電源の確保等、情報通信システムの保全対策を実施する。

(7) 防災訓練や消火器の使い方等の講習

  • 非常時に慌てず、迅速かつ的確に行動がとれるように、消火器の使用方法に関する定期講習、防災訓練や防災教育を実施し、日頃の心構えを社員へ徹底しておく。

 

-「同業他社等との防災協定」の検討も-

阪神・淡路大震災(1995.1.17)が起きた時、印刷工場が被災した神戸新聞は、京都新聞に印刷を依頼しトラック輸送も京都新聞が助力、発行を続けた。

時事通信社と共同通信社も首都直下型地震が発生した際、新聞・放送へのニュースを大阪から協力して配信する協定が結ばれている。

災害時に起こりうる自社の損害を想定し、同業他社等との防災協定を締結することも検討しておきたい。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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被災したクライアント企業への

実務支援のポイント

〔労務面のアドバイス〕

【第3回】

「日頃の防災対策で被害の軽減を」

 

特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵

 

災害を避けることはできないが、災害から被る被害は、対処の仕方によって軽減することはできる。過去に起きた震災の教訓を生かし、企業が一丸となって、日頃から防災対策に取り組んでいただきたい。

緊急時において、人の思考力・判断力は平常時に比べて格段に低下する。そのため、事前の対策・準備は重要である。

『防災意識の高い企業が、万一の時、経営を守る』ということを理解しておきたい。

(1) 「防災マニュアル」の作成・整備

企業の防災マニュアルは、天災等が起こった時を想定し、見やすく、わかりやすく、使いやすいものを作成するとともに、適宜見直しを行うことで、常時役立つものにしておくことが必要である。

主に下記の点について記載する必要がある。

 災害時の組織体制の決定

組織は通常の経営組織と異なり、企業のトップが意思決定をし、組織的に役割分担を決め、担当者を配置する。

 緊急連絡網の作成、災害伝言ダイヤル、災害掲示板等の作成

緊急事態が発生した場合は、情報伝達が非常に重要である。デマや不確実な情報が氾濫して混乱が起こる可能性がある。正確な情報を迅速に収集し、社内に伝達していくことで、パニックを防止することができる。

 情報収集と提供の仕方

緊急時の情報を収集し、迅速に伝える方法を整備しておく。
  • 社員の安否・建物・設備・物品の被害状況・関係企業・取引先の被害状況等
  • 自社内の支店・営業所、取引先、消防、警察、市区町村役場、交通機関、近隣医療機関、ガス、水道、電気等の連絡先も一覧表にして記載する。

 

その他、東京都が作成した「東京防災」を参考にされたい。

【参考】 東京都ホームページ
「東京防災」の作成について

(2) 防災グッズ・防災備蓄品の保管・定期点検

  • 防災グッズ(ヘルメットや懐中電灯等、避難リュックサック)、防災備蓄品(食料・生活用品・その他非常用備品)について、常時保管し、定期的に点検する。
  • 品名・数量・保管場所・責任者等がわかるよう、チェックリストを作成しておく。
  • 特に、防災備蓄品等の保存状態、食品の消費期限等には十分注意し、定期的に点検し、整備する。

(3) 職場内における落下物・転倒物の防止対策を実施する。

(4) 危険物や消火用設備等の安全確認を行う。

(5) 非常口や避難経路の点検を行う。

(6) 重要データのバックアップ対策、非常電源の確保等、情報通信システムの保全対策を実施する。

(7) 防災訓練や消火器の使い方等の講習

  • 非常時に慌てず、迅速かつ的確に行動がとれるように、消火器の使用方法に関する定期講習、防災訓練や防災教育を実施し、日頃の心構えを社員へ徹底しておく。

 

-「同業他社等との防災協定」の検討も-

阪神・淡路大震災(1995.1.17)が起きた時、印刷工場が被災した神戸新聞は、京都新聞に印刷を依頼しトラック輸送も京都新聞が助力、発行を続けた。

時事通信社と共同通信社も首都直下型地震が発生した際、新聞・放送へのニュースを大阪から協力して配信する協定が結ばれている。

災害時に起こりうる自社の損害を想定し、同業他社等との防災協定を締結することも検討しておきたい。

(了)

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連載目次

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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント

【経営面のアドバイス

(公認会計士・税理士 中谷敏久)

【会計面のアドバイス

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)
(公認会計士・税理士 新名貴則)
(公認会計士 深谷玲子)

【労務面のアドバイス

(特定社会保険労務士・中小企業診断士 小宮山敏恵)

【税務面(法人税・消費税)のアドバイス】

(公認会計士・税理士 新名貴則)

【税務面(所得税)のアドバイス】

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)

【法務面のアドバイス】

(弁護士 岨中良太)

【ケーススタディQ&A】

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)

(公認会計士・税理士 深谷玲子)

筆者紹介

小宮山 敏恵

(こみやま・としえ)

特定社会保険労務士・中小企業診断士

オフィス小宮山
http://www.k-komiyama.com/

慶応義塾大学大学院 修士課程修了
〈女性活用・人事組織活性化・キャリア自律・モチベーションの研究〉

三井不動産株式会社人事部に勤務し、人事・給与関係の業務に携わる。退職後、コンサルタント会社等の経験を経て、オフィス小宮山を開設。
企業の社会保険、給与計算業務や人事・賃金制度設計、人事コンサルタント業務を行っている。また、各種研修講師としても、幅広く活躍している。

【著書】
・『士業事務所のためのビジネスマナー&ビジネス文書』東洋法規出版
・『社員のやる気が高まる目標管理』東洋法規出版
・『気がきく人になるレッスン』ばる出版
・『マンガはじめて社労士、労働基準法、労働安全衛生法』住宅新報社
・『総務のおしごと手帖』日本実業出版社
他多数

関連書籍

社会保険・労働保険の事務手続

特定社会保険労務士 五十嵐芳樹 著

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須藤英章 監修 東京富士法律事務所 編著
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