公開日: 2023/04/13 (掲載号:No.515)
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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第85回】「タワマン節税事件」~最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)~

筆者: 菊田 雅裕

さっと読める!

実務必須の

[重要税務判例]

【第85回】

「タワマン節税事件」

~最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

タワマン節税事件

最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)

《概要》

被相続人Aは、平成21年1月30日、甲マンションを8億3,700万円で購入した(資金のうち6億3,000万円は借入金)。さらに、同年12月21日には、乙マンションを5億5,000万円で購入した(資金のうち4億2,500万円は借入金)。その後、Aは、平成24年6月17日に94歳で死亡した。甲マンション・乙マンションは、Aの遺言により、相続人Xが取得した。なお、Xは、平成25年3月7日、乙マンションを5億1,500万円で売却した。

Xを含むAの相続人らは、Y税務署長に対し、平成25年3月11日、Aの相続についての相続税の申告をした。当該申告では、相続税の総額は0円とされていた(なお、評価通達の定める方法により、甲マンションの評価額を2億円、乙マンションの評価額を1億3,300万円と算出(通達評価額))。これに対し、Y税務署長は、国税庁長官の指示により、甲マンション・乙マンションについて、評価通達の定める方法によらず他の合理的な方法により評価することとし、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準により算定した鑑定評価額に基づき(甲マンションを7億5,400万円、乙マンションを5億1,900万円と評価(鑑定評価額))、課税価格を算出し直したうえで、更正処分を行った(相続税の総額は2億4,000万円)。

Xは当該処分の取消しを求めたが、最高裁は、Xの主張を認めなかった。

《関係図》

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

▷争点

 相続税の課税価格に算入される財産の価額を、通達評価額を上回る価額によるものとすることは、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するか。

 本件の事情の下で、甲マンション・乙マンションについて、相続税の課税価格に算入すべき価額を、通達評価額を上回る価額によるものとすることは、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するか。

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実務必須の

[重要税務判例]

【第85回】

「タワマン節税事件」

~最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

タワマン節税事件

最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)

《概要》

被相続人Aは、平成21年1月30日、甲マンションを8億3,700万円で購入した(資金のうち6億3,000万円は借入金)。さらに、同年12月21日には、乙マンションを5億5,000万円で購入した(資金のうち4億2,500万円は借入金)。その後、Aは、平成24年6月17日に94歳で死亡した。甲マンション・乙マンションは、Aの遺言により、相続人Xが取得した。なお、Xは、平成25年3月7日、乙マンションを5億1,500万円で売却した。

Xを含むAの相続人らは、Y税務署長に対し、平成25年3月11日、Aの相続についての相続税の申告をした。当該申告では、相続税の総額は0円とされていた(なお、評価通達の定める方法により、甲マンションの評価額を2億円、乙マンションの評価額を1億3,300万円と算出(通達評価額))。これに対し、Y税務署長は、国税庁長官の指示により、甲マンション・乙マンションについて、評価通達の定める方法によらず他の合理的な方法により評価することとし、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準により算定した鑑定評価額に基づき(甲マンションを7億5,400万円、乙マンションを5億1,900万円と評価(鑑定評価額))、課税価格を算出し直したうえで、更正処分を行った(相続税の総額は2億4,000万円)。

Xは当該処分の取消しを求めたが、最高裁は、Xの主張を認めなかった。

《関係図》

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

▷争点

 相続税の課税価格に算入される財産の価額を、通達評価額を上回る価額によるものとすることは、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するか。

 本件の事情の下で、甲マンション・乙マンションについて、相続税の課税価格に算入すべき価額を、通達評価額を上回る価額によるものとすることは、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するか。

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連載目次

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]

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第1回~第90回

筆者紹介

菊田 雅裕

(きくた・まさひろ)

弁護士
横浜よつば法律税務事務所

【略歴】
・平成13年 東京大学法学部卒業
・平成16年 司法試験合格
・平成18年 弁護士登録
・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

【著書】
実務必須の重要税務判例100』(清文社、2025年)

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