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実務必須の
[重要税務判例]
【第91回】
「冷凍倉庫事件」
~最判平成22年6月3日(民集64巻4号1010頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
冷凍倉庫事件
最判平成22年6月3日(民集64巻4号1010頁)
《概要》
X社は倉庫業を営んでおり、冷凍倉庫(本件倉庫)を所有していた。Y市Z区長は、平成18年度に至るまで、本件倉庫を、一般用の倉庫に該当することを前提に評価しており、昭和62年度から平成13年度にかけて、X社に対し、これに基づいて固定資産税の賦課決定を行った。そして、X社は、これに基づいて、Y市に対し、該当年度分の固定資産税を納付した。
平成18年になって、Y市Z区長は、X社に対し、本件倉庫が冷凍倉庫等に該当する(一般用の倉庫より価格が低くなる)として、平成14年度から平成18年度までの登録価格を修正した旨通知したうえ、該当年度分の固定資産税の減額更正をし、納付済みであった平成14年度から平成17年度の固定資産税の過納分を還付した。
本件は、X社が、昭和62年度から平成13年度までの分についても、登録価格の決定につき、本件倉庫の評価を誤った違法があり、また、その評価の誤りにつき過失があると主張して、Y市に対し、国家賠償法に基づき損害賠償請求をした事案である(なお、X社は、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合にすることができる審査の申出・審査決定に対する取消訴訟等を行っていない)。
最高裁は、X社の主張を認めた。
《関係図》
▷争点
固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出・同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経ていない場合において、国家賠償請求により損害賠償請求をすることができるか。
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