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実務必須の
[重要税務判例]
【第92回】
「家屋の評価誤りと除斥期間事件」
~最判令和2年3月24日(民集74巻3号292頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
家屋の評価誤りと除斥期間事件
最判令和2年3月24日(民集74巻3号292頁)
《概要》
Xは、昭和57年、地下2階付き14階建ての建物(本件家屋)を新築し、以後所有していた。Y(東京都)は、本件家屋につき、当時の評価基準により、建築当初の再建築費評点数を18万3,400点と算出し、これに基づき、東京都知事は、昭和58年6月30日、本件家屋について価格決定をした。Xは、これに基づく納税通知に従い、Yに対し固定資産税等を納付した。以降、Yは、評価基準や自治省税務局長通知に従い、建築当初の再建築費評点数を基礎として、本件家屋の各基準年度分の再建築費評点数を算出し、これに基づき、東京都知事は、本件家屋につき各基準年度分の価格決定をし、Xは、これに基づく納税通知に従い、Yに対し各年度分の固定資産税等を納付した。
その後、Xは、「建築当初における再建築費評点数の算出等に誤りがあったため、これを基礎として順次算出されたその後の各基準年度再建築費評点数にも誤りがあることとなり、その結果、本件家屋につき過大な固定資産税等を納付することとなって、損害が生じた」として、Yに対し、平成4年度から平成20年度までの各年度における固定資産税等の過納金相当額等につき、国家賠償請求をしたが、それが本件である。
裁判では、上記評価誤りや公務員の過失が認められたが、さらに、これに係る損害賠償請求権についての除斥期間の起算点が問題となり、最高裁は、この点に関する事実関係についての審理が尽くされていないとして、本件を高裁に差し戻した。
《関係図》
▷争点
家屋の評価の誤りに基づき固定資産税等の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る除斥期間の起算点はいつか。
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