租税争訟レポート
【第29回】
「不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
国税不服審判所平成27年11月4日裁決(名裁(所)平27-10)
(一部取消し)
(※) 国税不服審判所ホームページ
[審査請求人]
不動産貸付業を営む個人
[争 点]
(1) 所得税法に関する争点
イ 敷金は、請求人の平成24年分の不動産所得に係る総収入金額に算入すべきか否か
ロ 修繕費、修繕積立金、リフォーム代金等は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か
ハ コンサルティング委託料及び会計税務委託料は、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されるか否か
ニ 減価償却費の計算における建物等の取得価額の算定方法の適否
ホ 減価償却費の計算における建物と建物附属設備の区分及び各取得価額の算定方法の適否
(2) 国税通則法に関する争点
イ 賦課決定通知書の理由附記に不備があるか否か
ロ 修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」といえるか否か
ハ 当初申告が過少申告であったことについて、通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」があるか否か
ニ 更正通知書の理由附記に不備があるか否か
[裁決]
国税不服審判所は、争点(1)イについて審査請求人の主張の一部を認め(一部取消し)たものの、それ以外の争点については原処分庁の主張を認めた。
【事案の概要】
本件は、不動産貸付業を営む審査請求人が、所得税の修正申告をしたところ、原処分庁が過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してしたものではないなどとして、過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求めるとともに、請求人による修正申告について、原処分庁が、請求人が返還しなかった敷金は不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであり、一方、請求人が支払った設備の修繕費、修繕積立金及び委託料は必要経費に算入されないとして、また、減価償却費の計算に誤りがあるなどとして更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分等の一部の取消しを求めた事案である。
【審査請求人による不動産貸付のスキーム】
審査請求人は、その妻が代表取締役であるR社との間に各種の業務委託契約を締結していた(下図参照)。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。