公開日: 2016/09/15 (掲載号:No.185)
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被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔労務面のアドバイス〕 【第1回】「実際に災害が起きた場合、人事労務管理上すべきこと」

筆者: 小宮山 敏恵

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被災したクライアント企業への

実務支援のポイント

〔労務面のアドバイス〕

【第1回】

「実際に災害が起きた場合、人事労務管理上すべきこと」

 

特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵

 

-はじめに-

災害、特に大きな被害を及ぼす地震は予知できるのだろうか。気象庁の公式見解は、予知できる可能性があるのは東海地震だけとしており、それ以外については「直前に予知できるほど現在の科学技術が進んでいない」としている。

災害は予知・予見不可能であり、業種を問わず、すべての企業が直面する大きなリスクとなる。このため、災害は「起こる」という前提で、事前に災害対策を講じ、会社・組織としての危機管理体制を維持しておくことは、すでに企業のCSR(社会的責任)の1つとなっている。

災害による被害をできるだけ最小限にするためには、個人個人が自ら取り組む「自助」、企業や地域、身近にいる人同士が助け合って取り組む「共助」、国や地方公共団体などが取り組む「公助」が重要だと言われている。

被災体験を聞いたり、記録を検証するなど災害対策を実施することで、社員一人ひとりが防災を自身のことと認識し、企業が講じる対策に積極的に取り組む意識を高めることが大切である。

企業は、それぞれの場面(被災前→被災直後→応急対応→復旧)で生じる状況を想定し、社員及び自社の安全確保、公的支援等について、それぞれに労務管理で対応すべきことがある。

今回より、その労務管理上における実務支援のポイントを整理することにしたい。

 

地震、火災、台風、豪雨などの災害は、地域の産業・経済、そして企業経営に大きな被害をもたらす場合がある。さまざまな災害とその程度を想定し、企業の被害を最小限に食い止め、被災した場合、迅速に対応するため社員一人ひとりの防災意識を高め、災害時に備える組織作りが必要となる。

災害発生時の初期対応が何より重要であり、事業活動の復旧と2次災害の回避に大きく影響する。こうした時こそ、社員全員がパニック状態に陥ることなく、冷静な状況判断ができるよう、日頃から災害意識を維持し、人命はもとより、企業に係る資産(施設・情報・財産等)を守る対応策を講じる「危機管理体制」の構築が重要である。

 

(1) 応急救護、初期対応、避難場所への誘導等

災害発生時に最優先すべきは、社員の「人命保護」である。素早い消火活動と迅速な避難場所への誘導が、社員の大切な命を守ることになる。

地震が起きた場合、作業を停止し、まずは自身の安全を優先する。怪我人がいる場合は、社員による応急手当や、救急車を要請し医療機関へ早急に搬送する。

なお、大規模災害の直後は、救急や医療機関が対応できないことが多いと考えられる。そのような事態を想定し、事前に「素人ができる医療行為」について、救急や医療機関に確認しておくことも必要である。

さらに火気使用場所を確認し、火災を発見した場合は、大声で周囲の人に知らせ、119番へ通報する。火災が大きくならないよう、初期消火(消火器・消火栓・水バケツ等)にも努めたい。

災害時に備え、日頃から周辺の避難場所を確認し、集合場所を決めておくことも重要である。市町村の防災マップなどに基づいて避難場所を決めておき、実際に歩いて経路や場所の確認を行っておきたい。

また、転倒物・落下物等の危険防止対策、消火装置の点検を定期的に行い、非常口や避難経路を確認するなど、地震・火災対策を立てておくことも重要となる。

 

(2) 災害対策本部の設置-情報の一元化とトップダウン

災害時においては、社内で「災害対策本部」を設置し、情報の収集・管理を一元化する必要がある。方針決定責任者(通常は社長)がトップダウンによる決定・指示・命令を速やかに行えるよう、組織体制を整えておきたい。

なお、責任者が不在あるいは負傷した場合の代行者についても決めておく必要がある。また対策本部の担当社員には、自宅から自転車や徒歩で会社へ到着できる人員を含めておくことが必要である。

対策本部では下記のような手順により、まず、社員の安否を確認し、被災社員とその家族の保護・援助をするとともに、2次災害の防止策や、企業資産の保護について対策を講じ、事業活動の早期復旧に向けて準備を行うことになる。

社員・家族の安否確認(電話・メール・SNS・直接訪問・ホームページ等)

救出・救助の応援・指示

災害状況の把握・提供

(※) メモを張り付ける大きな掲示板が役に立つ。

通信の確保、交通機関や道路の状況把握

病院・ライフラインの把握  等

(※) 企業活動に欠かせない電気・ガス・水道の復旧状況を把握することも重要となる。

 

(3) 企業ホームページや掲示板へ最新の情報提供を掲載

対策本部が収集した企業の被災状況や、連絡が取れない社員の安否については、迅速に周知しなければならない。

この場合、企業のホームページや、社内掲示板(社内イントラ等)の開放が考えられる。

このため、日頃からホームページや掲示板は最新のものに整備し、対策本部の担当社員が更新の手続をできるようにしておくことが必要である。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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被災したクライアント企業への

実務支援のポイント

〔労務面のアドバイス〕

【第1回】

「実際に災害が起きた場合、人事労務管理上すべきこと」

 

特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵

 

-はじめに-

災害、特に大きな被害を及ぼす地震は予知できるのだろうか。気象庁の公式見解は、予知できる可能性があるのは東海地震だけとしており、それ以外については「直前に予知できるほど現在の科学技術が進んでいない」としている。

災害は予知・予見不可能であり、業種を問わず、すべての企業が直面する大きなリスクとなる。このため、災害は「起こる」という前提で、事前に災害対策を講じ、会社・組織としての危機管理体制を維持しておくことは、すでに企業のCSR(社会的責任)の1つとなっている。

災害による被害をできるだけ最小限にするためには、個人個人が自ら取り組む「自助」、企業や地域、身近にいる人同士が助け合って取り組む「共助」、国や地方公共団体などが取り組む「公助」が重要だと言われている。

被災体験を聞いたり、記録を検証するなど災害対策を実施することで、社員一人ひとりが防災を自身のことと認識し、企業が講じる対策に積極的に取り組む意識を高めることが大切である。

企業は、それぞれの場面(被災前→被災直後→応急対応→復旧)で生じる状況を想定し、社員及び自社の安全確保、公的支援等について、それぞれに労務管理で対応すべきことがある。

今回より、その労務管理上における実務支援のポイントを整理することにしたい。

 

地震、火災、台風、豪雨などの災害は、地域の産業・経済、そして企業経営に大きな被害をもたらす場合がある。さまざまな災害とその程度を想定し、企業の被害を最小限に食い止め、被災した場合、迅速に対応するため社員一人ひとりの防災意識を高め、災害時に備える組織作りが必要となる。

災害発生時の初期対応が何より重要であり、事業活動の復旧と2次災害の回避に大きく影響する。こうした時こそ、社員全員がパニック状態に陥ることなく、冷静な状況判断ができるよう、日頃から災害意識を維持し、人命はもとより、企業に係る資産(施設・情報・財産等)を守る対応策を講じる「危機管理体制」の構築が重要である。

 

(1) 応急救護、初期対応、避難場所への誘導等

災害発生時に最優先すべきは、社員の「人命保護」である。素早い消火活動と迅速な避難場所への誘導が、社員の大切な命を守ることになる。

地震が起きた場合、作業を停止し、まずは自身の安全を優先する。怪我人がいる場合は、社員による応急手当や、救急車を要請し医療機関へ早急に搬送する。

なお、大規模災害の直後は、救急や医療機関が対応できないことが多いと考えられる。そのような事態を想定し、事前に「素人ができる医療行為」について、救急や医療機関に確認しておくことも必要である。

さらに火気使用場所を確認し、火災を発見した場合は、大声で周囲の人に知らせ、119番へ通報する。火災が大きくならないよう、初期消火(消火器・消火栓・水バケツ等)にも努めたい。

災害時に備え、日頃から周辺の避難場所を確認し、集合場所を決めておくことも重要である。市町村の防災マップなどに基づいて避難場所を決めておき、実際に歩いて経路や場所の確認を行っておきたい。

また、転倒物・落下物等の危険防止対策、消火装置の点検を定期的に行い、非常口や避難経路を確認するなど、地震・火災対策を立てておくことも重要となる。

 

(2) 災害対策本部の設置-情報の一元化とトップダウン

災害時においては、社内で「災害対策本部」を設置し、情報の収集・管理を一元化する必要がある。方針決定責任者(通常は社長)がトップダウンによる決定・指示・命令を速やかに行えるよう、組織体制を整えておきたい。

なお、責任者が不在あるいは負傷した場合の代行者についても決めておく必要がある。また対策本部の担当社員には、自宅から自転車や徒歩で会社へ到着できる人員を含めておくことが必要である。

対策本部では下記のような手順により、まず、社員の安否を確認し、被災社員とその家族の保護・援助をするとともに、2次災害の防止策や、企業資産の保護について対策を講じ、事業活動の早期復旧に向けて準備を行うことになる。

社員・家族の安否確認(電話・メール・SNS・直接訪問・ホームページ等)

救出・救助の応援・指示

災害状況の把握・提供

(※) メモを張り付ける大きな掲示板が役に立つ。

通信の確保、交通機関や道路の状況把握

病院・ライフラインの把握  等

(※) 企業活動に欠かせない電気・ガス・水道の復旧状況を把握することも重要となる。

 

(3) 企業ホームページや掲示板へ最新の情報提供を掲載

対策本部が収集した企業の被災状況や、連絡が取れない社員の安否については、迅速に周知しなければならない。

この場合、企業のホームページや、社内掲示板(社内イントラ等)の開放が考えられる。

このため、日頃からホームページや掲示板は最新のものに整備し、対策本部の担当社員が更新の手続をできるようにしておくことが必要である。

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント

【経営面のアドバイス

(公認会計士・税理士 中谷敏久)

【会計面のアドバイス

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)
(公認会計士・税理士 新名貴則)
(公認会計士 深谷玲子)

【労務面のアドバイス

(特定社会保険労務士・中小企業診断士 小宮山敏恵)

【税務面(法人税・消費税)のアドバイス】

(公認会計士・税理士 新名貴則)

【税務面(所得税)のアドバイス】

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)

【法務面のアドバイス】

(弁護士 岨中良太)

【ケーススタディQ&A】

(公認会計士・税理士 篠藤敦子)

(公認会計士・税理士 深谷玲子)

筆者紹介

小宮山 敏恵

(こみやま・としえ)

特定社会保険労務士・中小企業診断士

オフィス小宮山
http://www.k-komiyama.com/

慶応義塾大学大学院 修士課程修了
〈女性活用・人事組織活性化・キャリア自律・モチベーションの研究〉

三井不動産株式会社人事部に勤務し、人事・給与関係の業務に携わる。退職後、コンサルタント会社等の経験を経て、オフィス小宮山を開設。
企業の社会保険、給与計算業務や人事・賃金制度設計、人事コンサルタント業務を行っている。また、各種研修講師としても、幅広く活躍している。

【著書】
・『士業事務所のためのビジネスマナー&ビジネス文書』東洋法規出版
・『社員のやる気が高まる目標管理』東洋法規出版
・『気がきく人になるレッスン』ばる出版
・『マンガはじめて社労士、労働基準法、労働安全衛生法』住宅新報社
・『総務のおしごと手帖』日本実業出版社
他多数

関連書籍

【電子書籍版】税務・労務ハンドブック

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税務・労務ハンドブック

公認会計士・税理士 菊地 弘 著 公認会計士・税理士 井村 奨 著 税理士 山口光晴 著 特定社会保険労務士 佐竹康男 著 特定社会保険労務士 井村佐都美 著

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