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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント
〔労務面のアドバイス〕
【第4回】
「大規模災害が社員に与えるストレス」
特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵
災害によるストレスは長期に及ぶことが多く、様々な健康への影響が懸念される。「死ぬかもしれなかった」という恐怖体験、「大切な人を亡くす」という喪失体験だけでなく、水・電気・ガス・交通等のライフラインの遮断や避難所生活等によるストレス等がある。
こうした災害によるストレスは、PTSDやうつ病などの精神疾患を発症する要因となる。企業にとって社員の健康管理は不可欠であり、社員が安心して職場に復帰できる体制づくりが企業活動の早期復旧への近道であるといえよう。
(1) PTSDとは
PTSDとは「心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder)」の略称であり、災害などによって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらすストレス障害をいう。
命の安全が脅かされるような出来事や災害、強烈な精神的ショック(外傷体験)を経験することによって、それが非常に深い心の傷(トラウマ)となり、時間が経ってからも同じような恐怖を感じ続け、心身に様々な症状を引き起こす精神的な後遺症・疾患である。
外傷体験をすれば、誰でも恐怖を感じたり、何度も体験を思い出したりして苦しむものである。多くの人は時間が経つにつれて恐怖を克服していくが、PTSDの場合は、その記憶が1ヶ月以上にわたって薄れることはなく、突然怖い体験を思い出す。このため、不安や緊張が続く、頭痛がある、眠れないといった症状になって現れる。
PTSDの初期対応としては「安心感を与えること」「友人などから励ましの電話をもらう」「ニュースを見ない」などが求められるが、さらに下記のような心のケアが必要と考えられる。
- 24時間電話相談窓口
- 保健所・児童相談所・学校・病院等への相談
- 身体的ケア
- ボランティアとの連携
- 援助者の援助
(2) 社員のPTSDに対する企業サポートとは
社員のPTSDによるストレスが長期化している場合、企業の行う積極的なサポートとして、次のような対応が考えられる。
- 悩みや軽度のうつ症状を改善するための産業カウンセラーによるカウンセリング
- 症状が悪化した社員のケアのための治療や指導(産業医や診療内科等の受診)
- (臨時の)ストレスチェックの実施
(3) 長期休業者への対応について
症状の悪化により長期休業に至った場合は、次のような対応が考えられる。
- 休職期間の開始・満了等で就業規則の弾力的運用
- 休業中のケア
- 職場復帰の可否判断
- 職場復帰支援
- 職場復帰後のフォローアップ
その他、下記の厚生労働省ホームページを参照されたい。
(了)
11月からは「税務面(法人税・消費税)におけるアドバイス」がスタートします。
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