租税争訟レポート
【第58回】
「居住用不動産の売買取引に係る課税仕入れの区分
(控訴審:東京高等裁判所令和3年7月29日判決
(第一審:東京地方裁判所令和2年9月3日判決))」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【判決の概要】
〈控訴審〉
東京高等裁判所令和3年7月29日判決
令和2年(行コ)第190号消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
TAINSコード:Z888-2366
[控訴人(第一審被告)]
国
処分行政庁:麹町税務署長
[被控訴人(第一審原告)]
株式会社エー・ディー・ワークス
(以下「ADワークス」と略称することがある)
[争点]
(1) 本件各課税仕入れの用途区分〔争点1〕
(2) 平等取扱原則違反の有無〔争点2〕
(3) 国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無〔争点3〕
[判決]
原判決取消し
被控訴人の請求棄却(納税者敗訴)(被控訴人上告受理申立て)
〈第一審〉
東京地方裁判所令和2年9月3日判決(※)
平成30年(行ウ)第559号消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
TAINSコード:Z888-2312
[原告]
ADワークス
[被告]
国
処分行政庁:麹町税務署長
[争点]
(1) 本件各更正処分の適法性に関し
ア 本件各課税仕入れの用途区分(本件各課税仕入れが課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきものであるか)〔争点1〕
イ 平等取扱原則違反の有無〔争点2〕
(2) 本件各賦課決定処分の適法性に関し
国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無〔争点3〕
[判決]
全部取消し(納税者勝訴)(被告控訴)
(※) 詳細は本連載【第53回】を参照。
【事案の概要】
不動産の売買及び仲介業務等を目的とする株式会社である原告は、平成27年3月期から平成29年3月期までの各課税期間において、将来の転売を目的としてマンション84棟(その一部又は全部が住宅として貸し付けられているもの。以下「本件各マンション」という)を購入した。
本件各マンションの購入は、消費税法2条12号に定める課税仕入れに当たるところ、原告は、各課税期間に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の確定申告において、本件各課税仕入れが同法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(課税対応課税仕入れ)に区分されるとして、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除して申告を行った。
これに対し、麹町税務署長(処分行政庁)は、本件各課税仕入れは同号にいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」(共通対応課税仕入れ)に区分すべきものであるから、本件各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないとして、平成30年7月30日付けで、原告に対し、各課税期間に係る消費税等の各更正処分及びこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
本件は、原告が、被告を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
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