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実務必須の
[重要税務判例]
【第90回】
「ユニバーサルミュージック事件」
~最判令和4年4月21日(民集76巻4号480頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
ユニバーサルミュージック事件
最判令和4年4月21日(民集76巻4号480頁)
《概要》
X社は、フランス法人A社が直接的又は間接的に全ての株式・出資を保有する法人から成る企業グループに属している合同会社であり、グループ会社であるオランダ法人C社により設立された。その後、C社は、X社に追加の出資を行い、また、同日、グループ会社であるフランス法人D社は、X社に対し、無担保で866億円を貸し付けた。他方、グループ会社であるオランダ法人E社は、グループ会社である日本法人F社の全ての株式を保有していたのであるが、X社は、上記の出資金・借入金を原資として、同日、E社から、F社の全株式を取得した。さらに、後日、X社は、F社を吸収合併した。
その後、X社は、D社に対して借入金の利息を支払ったうえ、当該支払利息を損金の額に算入して、法人税の確定申告を行った。これにより、X社の法人税の額が大幅に減少することとなった。
Y税務署長は、当該損金算入はX社の法人税の負担を不当に減少させる結果になるものであるとして、法人税法132条1項を適用し、その原因となる行為を否認してX社の所得の金額につき支払利息の額に相当する金額を加算して、法人税の額を計算したうえで、X社に対し更正処分をした。そこで、X社が当該処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。
最高裁は、X社の主張を認めた。
《関係図》
▷争点
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義。
2 本件において組織再編成に係る一連の取引の一環として行われた金銭の借入は、法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当するか。
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