公開日: 2024/07/11 (掲載号:No.577)
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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第99回】「IBM事件」~東京地判平成26年5月9日(税務訴訟資料264号順号12469)、東京高判平成27年3月25日(税務訴訟資料265号順号12639)~

筆者: 菊田 雅裕

さっと読める!

実務必須の

[重要税務判例]

【第99回】

「IBM事件」

~東京地判平成26年5月9日(税務訴訟資料264号順号12469)、
東京高判平成27年3月25日(税務訴訟資料265号順号12639)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

IBM事件

東京地判平成26年5月9日(税務訴訟資料264号順号12469)、
東京高判平成27年3月25日(税務訴訟資料265号順号12639)

《概要》

C社は、米国法人B社(米国法人A社の完全子会社)の完全子会社であった。平成14年4月、X社(特例有限会社)は、B社から、その保有するC社株式の全部を取得し、C社を完全子会社とした。その後、X社は、C社株式の一部を数回に分けてC社に譲渡したことにより、当該譲渡に係る譲渡損失額合計3,995億円を計上した。X社は、これを後年度に繰り越したうえ、C社等との連結納税のみなし承認を得て、X社を連結親法人として、上記譲渡損失額を所得の金額の計算上損金の額に算入して法人税の確定申告をした。

これに対し、Y税務署長は、同族会社の行為等の否認に関する法人税法132条1項の規定を適用して、上記譲渡損失額の損金算入を否認する旨の更正処分をした。そこで、X社が、当該処分の取消を求めて出訴したのが本件である。

最高裁は、Y税務署長の主張を認めなかった。

《関係図》

▷争点

X社が、その子会社であるC社に対してC社の株式の一部を譲渡することによって譲渡損失を生じさせ、その額を所得の金額の計算上損金の額に算入することによって法人税の負担を減少させたことは、法人税法132条1項にいう「不当」なものと評価できるか。

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[重要税務判例]

【第99回】

「IBM事件」

~東京地判平成26年5月9日(税務訴訟資料264号順号12469)、
東京高判平成27年3月25日(税務訴訟資料265号順号12639)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

IBM事件

東京地判平成26年5月9日(税務訴訟資料264号順号12469)、
東京高判平成27年3月25日(税務訴訟資料265号順号12639)

《概要》

C社は、米国法人B社(米国法人A社の完全子会社)の完全子会社であった。平成14年4月、X社(特例有限会社)は、B社から、その保有するC社株式の全部を取得し、C社を完全子会社とした。その後、X社は、C社株式の一部を数回に分けてC社に譲渡したことにより、当該譲渡に係る譲渡損失額合計3,995億円を計上した。X社は、これを後年度に繰り越したうえ、C社等との連結納税のみなし承認を得て、X社を連結親法人として、上記譲渡損失額を所得の金額の計算上損金の額に算入して法人税の確定申告をした。

これに対し、Y税務署長は、同族会社の行為等の否認に関する法人税法132条1項の規定を適用して、上記譲渡損失額の損金算入を否認する旨の更正処分をした。そこで、X社が、当該処分の取消を求めて出訴したのが本件である。

最高裁は、Y税務署長の主張を認めなかった。

《関係図》

▷争点

X社が、その子会社であるC社に対してC社の株式の一部を譲渡することによって譲渡損失を生じさせ、その額を所得の金額の計算上損金の額に算入することによって法人税の負担を減少させたことは、法人税法132条1項にいう「不当」なものと評価できるか。

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連載目次

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例]

連載が単行本になりました!!
くわしくは[こちら

第1回~第80回

第81回~

筆者紹介

菊田 雅裕

(きくた・まさひろ)

弁護士
横浜よつば法律税務事務所

【略歴】
・平成13年 東京大学法学部卒業
・平成16年 司法試験合格
・平成18年 弁護士登録
・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

【著書】
さっと読める!実務必須の重要税務判例70』(清文社、2021年)

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