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実務必須の
[重要税務判例]
【第64回】
「荒川民商事件」
~最決昭和48年7月10日(刑集27巻7号1205頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
荒川民商事件
最決昭和48年7月10日(刑集27巻7号1205頁)
《概要》
Xはプレス加工業を営む個人であり、ある年分の所得税の確定申告書をY´税務署長に提出していた。しかし、Y´税務署は、これについて過少申告の疑いがあり、税務調査の必要があると考えた。そのため、税務調査の目的で、3回にわたり職員を派遣したが、Xと押問答になり、目的を遂げることができなかった。
そこで、職員は、さらに数日後にXを訪問し、質問検査権に基づく調査をすること、応じないと刑罰に触れることをXに告げて、調査に応じるよう要求したが、Xはこれを拒否した。後日、Y検察官は、この日の不答弁・検査拒否は、所得税法旧234条1項に違反しており、よって同法旧242条8号の罪に該当するとして、Xを起訴した。
Xは、該当の条文に規定された犯罪構成要件が不明確であり、憲法31条で保障された適正手続に反するなどとして争ったが、最高裁は、Xに有罪判決を言い渡した二審の判断を支持した。
《関係図》
▷争点
質問検査権について規定した所得税法旧234条1項は、犯罪構成要件の規定として明確性を欠くか。
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