公開日: 2015/07/02 (掲載号:No.126)
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租税争訟レポート 【第24回】「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈前編〉」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第24回】

「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の

必要経費該当性(東京地方裁判所判決)」

〈前編〉

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

平成27年3月10日、最高裁判所は、馬券の的中による払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、国税庁による「所得税基本通達」を否定する内容の判決を言い渡した

この判決を受けて、国税庁は基本通達改正に向けた手続きに入っていた(「速報解説」参照)。

そうした中、最高裁判決とは別の課税処分等取消請求事件で、東京地方裁判所は、5月14日、最高裁判決とは異なる見解を示し、競馬所得を一時所得、総収入から控除する金額を的中した馬券に係る購入金額とすることが相当であるとして課税庁側勝訴の判決を言い渡した。

そして、判決から約2週間後である5月29日、パブリック・コメントを経て改正された所得税基本通達34-1が公表された。

本稿では、まず、〈前編〉として、東京地裁平成27年5月14日判決の概要を解説し、〈後編〉(次週公開)として、最高裁判決との相違点、最高裁判決から通達改正に至る手続きにおける問題点について、パブリック・コメントで寄せられた意見とこれに対する国税庁の考え方などを引用しながら、検討したい。

東京地方裁判所平成27年5月14日判決

[原告]

地方公務員である納税者

[被告]


処分行政庁:稚内税務署

[争 点]

① 本件競馬所得が、一時所得に該当するか、雑所得に該当するか

② 本件競馬所得に係る総収入金額から外れ馬券の購入代金を控除できるか否か

[判決]

原告の請求を却下(納税者敗訴)

[国税不服審判所裁決]

平成24年6月27日裁決(棄却)

  • 本件競馬所得は一時所得と認めるのが相当
  • 本件競馬所得の計算において総収入金額から控除する金額は的中した馬券に係る購入金

 

【事案の概要】

本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。

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【第24回】

「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の

必要経費該当性(東京地方裁判所判決)」

〈前編〉

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

平成27年3月10日、最高裁判所は、馬券の的中による払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、国税庁による「所得税基本通達」を否定する内容の判決を言い渡した

この判決を受けて、国税庁は基本通達改正に向けた手続きに入っていた(「速報解説」参照)。

そうした中、最高裁判決とは別の課税処分等取消請求事件で、東京地方裁判所は、5月14日、最高裁判決とは異なる見解を示し、競馬所得を一時所得、総収入から控除する金額を的中した馬券に係る購入金額とすることが相当であるとして課税庁側勝訴の判決を言い渡した。

そして、判決から約2週間後である5月29日、パブリック・コメントを経て改正された所得税基本通達34-1が公表された。

本稿では、まず、〈前編〉として、東京地裁平成27年5月14日判決の概要を解説し、〈後編〉(次週公開)として、最高裁判決との相違点、最高裁判決から通達改正に至る手続きにおける問題点について、パブリック・コメントで寄せられた意見とこれに対する国税庁の考え方などを引用しながら、検討したい。

東京地方裁判所平成27年5月14日判決

[原告]

地方公務員である納税者

[被告]


処分行政庁:稚内税務署

[争 点]

① 本件競馬所得が、一時所得に該当するか、雑所得に該当するか

② 本件競馬所得に係る総収入金額から外れ馬券の購入代金を控除できるか否か

[判決]

原告の請求を却下(納税者敗訴)

[国税不服審判所裁決]

平成24年6月27日裁決(棄却)

  • 本件競馬所得は一時所得と認めるのが相当
  • 本件競馬所得の計算において総収入金額から控除する金額は的中した馬券に係る購入金

 

【事案の概要】

本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた原告が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長であった稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたため、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであるから、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第60回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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